ステファン・ダントン

 

 
 
 
 神楽坂の路地裏の中華料理店でビールと冷やし中華の遅めのランチをとった私たちは、神楽坂の日向の道へ戻った。
 

 

  

本のまち神楽坂

 

  神楽坂に戻るとすぐに可愛らしいブックカフェが目に入った。早速入ってみると、テーマ別に並べられた個性的な本の数々。1冊手に取ると周りの本も気になって、あれこれ見ているうちに本の世界に取り込まれ、頭の中にイメージの地図が広がっていくような不思議でおもしろい感覚に夢中になってしまった。

 パリに住んでいた頃、古い本や画集を集めるのが趣味で、古本屋巡りをしていた。読書が好きだから、日常的に本屋に通ってもいた。目的の本がありそうな店に向かい、それを手にできれば目標達成。だが、それぞれ個性的な品揃えの本屋で思いもかけない掘り出し物に出会うのが楽しみだった。「今日はどんな本に出会えるかな」と本屋に向かい、新しい何かに出会えたときの喜びは、本好きにはわかってもらえると思う。

 

 「かもめブックス」というその店で、パリにいた頃の本屋の醍醐味を思い出した。
 インターネットの普及のせいなのか、今、本が売れないという。本を探す、本と出会う、本を読む、という行為は、単に情報を得るためだけにするのではない、と私は思う。目的の情報の隣や後ろには、思いもかけないような広がりのある世界がある。インターネットはそれに気づかせてくれない。「世界を知ったつもり」にさせるトラップがそこにはあるように思う。だから私は今でも本が好きで本に対する愛を感じる本屋が大好きだ。聞けばこの「かもめブックス」という書店、本の校閲・校正を手がける会社が運営しているという。「なるほど、おもしろい本屋ができるはずだ」と感心した。

 「かもめブックス」のすぐ前に「ラカグ」という商業施設がある。今は日本各地の食品や食器などが集められているが、もともとはすぐ隣にある新潮社の倉庫だったそうだ。

 周辺には他にも出版社や出版に関わる印刷や製本の会社が昔からたくさんあるという。「やはりここは東京のカルチェラタンだ」という思いを新たにした。

 

「かもめブックス」の店先にて。

建築家隈研吾設計の「ラカグ」前にて。ここの階段デッキに使われている材木は、多分のデッキに使われているものだと思う。階段を登り降りするのが心地よい。