東京のパリで山梨ワイン

 

 日が暮れてくると、ワインを飲みたくなる。幸いここは東京のパリ。フレンチの店はいくらでもある。友人の店も何軒かあるから電話してみたが、軒並み夏の休業中。

 

 「この季節だ。仕方ない」とはじめての店にチャレンジすることにして、以前から気になっていた甲州ワインをウインドウに並べているビストロ「ルバイヤート」へ。時刻は午後5時すぎ。店の外にもちょっと飲めるスペースがある。そこで一杯飲ませてもらおうと様子をうかがっていると、向かいの店から桃を抱えた女性が出てきて「こんにちは」と声をかけてくれた。「こんにちは」と返しながら「感じのいい方だな。でも今日はこちらの店にお邪魔するので……」と思っていたら、その女性が「ルバイヤート」に入っていく。入っていきながら「よかったら中へどうぞ。山梨から送ってくれた桃を近所に配っていたところなんですよ」とおっしゃる。ちょうどよかった。「甲州をボトルでお願いします。できればその桃をつまみに出してくれればうれしいな」と軽口を叩くと、「冷やしてきますね」と快く応じてくれる。自然で心地よいやりとりが、日本なのになんだかフランスにいるようで。

 

 店内から出てこられたご主人はシニアソムリエ。自らグラスにワインを注いでくれた。冷えた白ワインがグラスに作る水滴がすでにご馳走。みんなで乾杯しながらちょっとだけワイン談義を。実は私もソムリエなので……。

 

 「この店では山梨のワイナリーのものをとくに仕入れています」とご主人。
 「日本のワインは評価が高いですよ。とくに甲州の白ワインはね。フランスのようにヨーロッパの乾燥した土壌の低い位置で育つ品種を日本で同じように育てるのは難しい。でも甲州は高い位置で育つ日本のブドウだから品質が安定する。日本の風土に合っている」と私。
 「日本のブドウは糖度も高くなりにくいから、一度濃縮してから醸造しなければならない。だからコストがかかることを知らない人も多い」とご主人。
 「山梨のワイナリーは日本らしいワインの作り方をよく研究してよいものを作っていてすばらしい。見せ方、売り方の点でも見習うところが多い。見習わなければならないのは、私が携わっている日本茶業界なんですが…」と私。

 そうこうするうちに、ご夫人が冷やした桃を切ってきてくれた。2本目のボトルも空いていく。東京のパリで山梨のワインと山梨の桃。シェフと思わぬ競馬談義をできたのも実に楽しかった。そうこうするうち、日も暮れかけて少し涼しくなってきた。ボトルも空いた。

 日本のパリといわれる神楽坂を堪能した1日をここで締めくくろう。ほろ酔いの帰り道、次は日本のカルチェラタンの総本山、神保町にでも足の伸ばそうかと考えていた。

路地を入ったところにある「ルバイヤート」。

店のウインドウに飾られた甲州ワインのボトル。

山梨産の桃(左)と山梨のワイン「甲州」(右)。夏の夕暮れの白ワインは格別。

店主のうめたにご夫妻と。

お店を切り盛りするうめたにさんと。

 

  編集協力/田村広子、スタジオポルト

 

九段下・神保町編へつづく

 

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