文と写真・サラーム海上

 

 

『バブ・スール』オーナー、サイード氏に会う 

 友人たちは一足先にタンジェに戻ってしまい、僕一人シャウエンにとり残された。一人でないとできないこともある。まずはショッピングでもしようか。

 



モロッコ北部の町、シャウエン

『レストラン・バブ・スール』でも使っていたフェズ製の陶器の皿を買いたいな。バブ・スールのウェイターに頼んで、旧市街中心の広場の脇にある陶器のお店まで案内してもらった。

 フェズ製のお皿は鮮やかなブルーの線による幾何学模様が特徴的な陶器。中東の陶器はトルコではアヴァノス、チュニジアのナブール、モロッコではサフィとタムグルート、そしてフェズが有名だ。イスラエルにもトルコ製とよく似た陶器がある。僕はそれらを一通り買ってはみた。トルコ製はカラフルだが、非常にもろく、簡単に欠けてしまうので、飾り用と考えるほうが良いだろう。それに対して、モロッコのフェズ製は色合いは地味だが、相当に丈夫で、少々乱暴にあつかっても、電子レンジに入れてもびくともしない。しかも、値段も安いから、モロッコに来る度に少しずつ買い足してきた。

 お店には大小様々なフェズ製の陶器が壁一面に並んでいた。店員の若いアニキがカモである外国人旅行者を前にもったいぶった商売トークをし始める前に、僕は大皿2つ、メゼ用の小皿2つ、小鉢2つを選んだ。

「メゼ用の小皿は幾らですか?」

「一つ1000円です」

「少年よ、よく聞きなさい。私はお前が生まれるはるか昔からモロッコに来ている。そして、この皿はフェズ製で、フェズでは400円で売っていることを知っている。だからこの皿はここでも400円だ」

「わかりました、サー。では500円でいかがでしょうか?」

 怒らずに、慇懃無礼に答えたのが功をなしたらしく、いきなり言い値の半額になった!

「ではこの大皿はいくらだ? 800円か?」

「ええ、800円です」

「では小鉢は?」

「300円です」

「すると6個で3200円になるな。私は遠く日本から来たのだから、2500円にまけなさい」

「いえ、サー。3000円でお願いします」

「よかろう、3000円を払おう。だが、私に特別にこの小鉢をもう一つプレゼントしてくれよ」

「わかりました、サー……」

「それと日本に持って帰るから梱包は丁寧にしてくれよ」

「わかりました、サー……」

 と、30年近くモロッコに通っているとさすがに買い物の交渉には強くなったという、ちょっとイイ小話でした。

 

フェズ製の陶器のお店。店員の若いアニキと値段交渉