近畿日本鉄道(近鉄)の路線は長い。総営業キロ程は501.1キロと私鉄の中では日本一。おもなターミナル駅は大阪市内の大阪難波、大阪上本町、大阪阿部野橋、布施のほかに、近鉄奈良、吉野、京都、賢島、近鉄名古屋などがあり、近畿の2府1県と三重県、愛知県をカバーしている。

 つまり、一口に近鉄沿線といえども、その範囲はべらぼうに広い。そのため、「近鉄沿線の特徴」といわれても、どの路線を選ぶかで大きく異なってくる。今回は、そんな中でもとくに特徴的な近鉄南大阪線と長野線を取りあげてみたい。

 南大阪線は大阪阿部野橋駅から橿原神宮前駅を結び、長野線は南大阪線の古市駅から河内長野駅までの支線だ。したがって大阪市と奈良県以外の両路線エリアは、南河内地区である。

 多分に漏れず、これらの地域は大阪市内中心部へのベッドタウンとして発展した。その一方、高野街道などの街道沿いには古い町並みも残る。そのため、新旧の住宅や住民が混在する地域といえる。ただ南大阪沿線の藤井寺市と羽曳野市には、宅地開発に関する大きな問題も存在する。それは古墳である。

 両市には、世界遺産に登録されている「百舌鳥・古市古墳群」の中の「古市古墳群」がひろがる。古墳の数は現存するもので87基。堺市の「百舌鳥古墳群」は44基なので古市古墳群のほうが多い。しかも面積が、古市古墳群は東西約2.5キロ、南北4キロなのに対し百舌鳥古墳群は東西南北約4キロ。古市古墳群のほうが密集していて、実際、藤井寺・羽曳野市を歩けば、あちこちに古墳が点在しているのがわかる。
ただ、この古墳の多さが開発の足かせになっている。なぜなら、地面を掘れば約1500年前の遺物が出てくる可能性も高いからだ。遺物・遺跡の発見となれば工事も一時ストップ。そのうえ天皇陵など宮内庁管理の古墳ともなれば、立ち入りすることすら許されない。そのため、新しい住宅地は古墳の少ない郊外に集中してしまい、その結果、新住民と旧来の住民とは隔絶されてしまうのだ。

 一方の長野沿線は、古墳群から離れてはいるものの、電車の本数が少なく便利が悪い。河内長野駅は南海高野線が通じているのでさほどでもないが、そのほかの駅の住民、とくに富田林市民は不便を強いられていることだろう。

 そのためか、富田林市の新興住宅地は西側のエリアにひろがっている。西側には南海高野線が通じていて滝谷駅や大阪狭山市内の金剛駅にも近いし、大阪外環状線などの道路も整備されているためクルマの移動は比較的スムーズだ。

 このように、南大阪線と長野線の沿線住民は「新旧住民分断型」といえる。それは南海高野線や泉北高速線にも当てはまることであり、南河内一帯の特徴といえるかもしれない。

 

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近鉄南大阪線の起点駅である大阪阿部野橋駅。近鉄百貨店が入りあべのハルカスと直結するターミナルビルの中にあり、JRの天王寺駅は道路をはさんだ向かい側に位置する。ちなみに駅名は「阿部野」だが所在地は「阿倍野区」。

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大阪阿部野橋駅と吉野駅を結ぶ「吉野特急」の車両。南大阪線はほかの近鉄路線とは異なり標準軌ではなく狭軌のため、車両も狭軌仕様のものが使われている。

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近鉄長野線の一般車両。長野線の起点は古市駅だが、基本的には大阪阿部野橋駅からの直通ダイヤが組まれている。

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古市古墳群の代表的存在といえる「応神天皇陵古墳」の拝所。その規模は百舌鳥古墳群の「仁徳天皇陵古墳」に次ぐ全国2位。古市古墳群には応神天皇陵のほかにも、仲哀天皇、允恭天皇、仁賢天皇、安閑天皇、清寧天皇、雄略天皇の御陵があり、百舌鳥古墳群の3基をうわまわっている。

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古市古墳群の中でも最古級とされる「津堂城山古墳」。古市古墳群の中では第6位、全国でも31位の前方後円墳だが、墳丘への出入りが可能。古市古墳群には、大型であっても自由に登れる古墳が多い。

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長野線富田林駅の近くにある古い町並みが残る寺内町。戦国時代末期に興生正寺別院を中核として開発されたとする。江戸時代からつづく住宅も現存し、1997年には国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された。

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富田林市に本部をおくパーフェクト リバティー教団(PL教)のシンボル「超宗派万国戦争犠牲者慰霊大平和祈念塔」。略称は「大平和祈念塔」、通称で「PLの塔」とも呼ばれ、毎年8月1日に行われる「教祖祭PL花火芸術」は全国でも有数の巨大花火大会でもある。