文/下川裕治 写真・動画/中田浩資

 

■不定期路線バスに乗るために、渡嘉敷島へ

 ゴールデンウイークに渡嘉敷島に渡ろうとした。しかし朝の便は満席だった。「とまりん」と呼ばれる泊ふ頭旅客ターミナルからは、何回となくフェリーや高速に乗ってきた。予約をしたことなど1回もなかった。

離島に向かう船はいつもすいている」

 そんな認識が僕のなかにはあった。しかしそんな離島便の常識を新型コロナウイルスは変えてしまったのかもしれない。2年間、沖縄の離島に行けなかった思いが、一気に予約に走らせた。そういうことにも思えた。

 沖縄の観光業界にしたら、やっとこういう状態に戻ってきたと胸をなでおろしていたのかもしれない。船会社にしても、めったにない満席である。相撲のように、満席御礼は出なかったが。

 しかし僕らは大変だった。ライブの予定もあった。それらをキャンセルし、日程を組みなおさなくてはいけなかった。

 満席になったのは、9時発のマリンライナーという高速船と10時発のフェリーだった。そして渡嘉敷島から戻る最終のマリンライナーも満席だった。日帰りで渡嘉敷島のビーチというのが、多くの観光客の行動パターンだった。自然と満席になる便は決まってくる。

 しかし僕らは路線バスだった。渡嘉敷島の港から阿波連ビーチを結ぶバスが1本あった。

 沖縄の離島の路線バスを乗りつぶすという企画が進んでいた。なかなか大変だったが、なんとか離島のバスを乗り終えた。しかし渡嘉敷島のバスは除外していた。

 路線バスというのは運賃をもらって運行する以上、なかなか面倒なルールがある。沖縄には自家用車有償旅客運送という枠組みで路線バスを走らせている離島は少なくない。そこにも市町村運営有償運送、交通空白地有償運送などがある。

 離島の路線バスに乗っていると、ついそういった面にも目が行ってしまう。そして渡嘉敷島の路線バスには、不定期定路線と記されたいた。

 路線バスをどう定義するかという話だった。いまは少子高齢化社会ということもあり、離島では路線バスとタクシーの境界がなくなりつつある。オンデマンド輸送というもので、島民は連絡を入れると、タクシーがきてくれるのだが、運賃は路線バス並みになっていることがある。タクシーが時刻表をつくって巡回している島もある。

 そのなかで渡嘉敷島の不定期定路線をどう考えたらいいものか。日程もあり、渡嘉敷島の路線バスははずすことにした。

 しかし気になっていた。たしかに不定期としているから路線バスとはいいにくいが、ほぼ路線バスのように運行しているのだ。どこかのどに刺さった小骨のような路線だった。

 そしてゴールデンウイーク。気になるなら乗ってしまえと港に向かったのだが、満席の文字に跳ね返されてしまった。

 しかし満席になっているのは朝の往路と夕方の復路だけだった。昼間の時間帯なら空席があった。バスは高速船やフェリーの時刻に接続していた。午後1時発のマリンライナーで渡嘉敷島に渡り、午後4時発のフェリーで戻る。渡嘉敷港からビーチのある阿波連まで乗るバスは所要時間が10分ほどだ。渡嘉敷島のバスを乗り尽くす時間は十分にあった。

渡嘉敷島と那覇を結ぶフェリー。定員450人。これが満席になるとは