ステファン・ダントン 

 

狭山茶専門店「備前屋」の自前の茶園を目指し、私たちの車は進む。広い県道から茶園に向かう道に入る。曲がるたびに道幅が狭くなっていく。車がギリギリ通れる道の終点に茶園はあった。車を降りると緑の中にウグイスの声だけが聞こえる。私たちの他には誰もいない。車の音すら聞こえない。

 

街中にひっそりたたずむ茶園を訪問

狭山は東京近郊ということもあり、住宅地の中にある茶園も多い。一方、備前屋の茶園は住宅地から離れた人気のない別天地だ。茶園の北側には雑木林があり、太陽に導かれて折れ曲がった枝が、茶園の上に天然の屋根をつくっている。

雑木林が屋根の役目となり、寒気から茶樹を守っている

茶摘み間近かになった茶葉の状態
狭山は思いのほか、気温が低い。このあたりでも冬場は氷点下5度くらいになる。霜を避けるため、高さ数メートルの「防霜ファン」をかなりの数設置するのが普通だ。しかし、備前屋の茶園は、北側の雑木林が天然の霜除けになっているため、通常よりも少ない数台で済んでいるという。しかも、雑木林の落ち葉が肥料になって土を豊かにしているのではないだろうか。茶園の両側には川が流れており、茶栽培に最適な水はけのよい土地だということもひと目でわかった。

茶園に到着してしばらくすると、日差しがどんどん強くなり、真夏のような暑さになった。雑木林の屋根の日陰に逃げ込むと、涼やかな空間にウグイスの声が心地よく響いた。時にはキジの声がすることもあるらしい。キツネが出てくることもあるらしい。備前屋の茶園は、都内から約50キロとは思えないほどの自然の中にある。