文/光瀬憲子

 

台北のとなりにある下町、板橋

 板橋と言っても、東京都の板橋区ではなく、韓国京機道の板橋洞でも忠清南道の板橋面でもない。台北のおとなりにある板橋(バンチャオ)区のことだ。台北のとなりの板橋は位置づけとしては東京の板橋かいわいとあまり変わらない。台北駅からMRT板南線でわずか15分。

 それでも、淡水河という台北の西を流れる河川を越えるためか、台北市内と比べるとぐっと庶民的な雰囲気になる。東京23区でありながら、なんとなく下町の香りがする板橋区と通じるものがある。

 板橋駅は、台湾鉄道(在来線)で台湾を北上した場合、台北駅のひとつ手前に位置する。かつて台北を目指す若者がこの地に降り立ち、居住地としたこともあって、今でもノスタルジックな雰囲気が漂う。板橋で育った子供は、台北への憧れを抱き、小銭を握りしめて淡水河を越えるバスに乗ったという。

 そんな昔ながらの板橋の下町情緒が漂うのは、MRTの府中駅だ。駅周辺にはこぎれいなビルが並んでいるものの、少し歩くと目の前に艶やかなオレンジ色の廟が現れる。これが旧板橋の磁場とも言える「慈恵廟」だ。

 

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黄石市場の入り口から見た「慈恵宮」。MRT府中駅から徒歩3分。この廟は、シャープ買収で話題になったホンハイの郭台銘会長が幼少時代を過ごしたところとしても有名

002慈恵宮の2階から向かいの黄石市場を見渡す。朝から夕暮れまで活気がある、コンパクトだがいい市場だ

 廟自体はとても古いのだが、手入れが行き届いており、訪れる人も多く、活気がある。廟が元気だということは、その地域が活気づいていることにほかならない。板橋ではこの廟の周りで人々が働いたり、食べたり飲んだりする。

 

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慈恵宮前の府中路の歩道に点々と並ぶ占い屋台。引っ越しの日取りや息子の志望校を気軽に相談できる

 この廟と対になるようにして、大通りの向かいには黄石市場という伝統市場がある。早朝から野菜や果物、朝ごはん屋台が並び、昼近くになると雑貨店や服飾店もシャッターを上げる。

 そして午後になるとおやつを求めて人々が集まる。だから、この市場には1日を通して人が集まり、廟とともに板橋区民のよりどころとなっているのだ。