文/光瀬憲子

 

 台北の隠れグルメタウン、板橋。台北駅からMRT板南線で15分のところにある府中駅は、川向こうの下町らしい見どころがある。

 

大富豪の家と庭を公園として開放している『林本源園邸』

 

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板橋のシンボルとも言える『慈恵宮』。古いが手入れが行き届いていて活気がある

 府中駅からすぐのところにある慈恵宮や黄石市場はもちろんだが、板橋と言えばもっとも有名な観光名所は『林家花園』だ。現在は『林本源園邸』と呼ばれている大富豪の屋敷で、朝9時から夕方5時頃まで一般に開放されている。林家は板橋では今でも有名な大地主。『林家花園』は、その一家が板橋に居を構え、米や塩などの商いを通じて富を築いた1800年代に建てられた大屋敷で、とても個人のものとは思えない規模である。

 

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林家の観稼樓という建物。この2階から見渡す限りが林家の敷地であり、そこにできる作物を眺めたという

 敷地内には池も小山もある。驚くことに、孔雀のオリまである。なんと、林家では孔雀をペットとして飼っていたそうで、その名残りで今も敷地内で飼育されているのだ。

 かつて、この林家のご令嬢と小学校の同級生だったという人に話を聞いたことがある。林家の孫娘は小学生の頃、子供部屋ではなく子供用の屋敷をまるごと1棟与えられていたそうだ。その屋敷で一緒におやつを食べたり、宿題をやったりしたという。

 一家の長である祖父が誕生会を開くときなど、屋敷の中にある池の前に設置された舞台に楽団や劇団を呼んで出し物をさせたりした。現代の富豪とはスケールが違う。建物も非常に凝った造りになっており、書庫、書斎、客間など、用途別に建てられている。

 園内の随所に見られる飾り窓などにも遊び心が伺えて、よく観察していると楽しい。林家の敷地を歩きながら、それが個人宅であること、ここに住んでいた富豪家族のことなどを思い浮かべると、なんだかワクワクしてしまう。

 

 

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敷地内には池と舞台があり、家長の誕生会には貴賓や近隣住民など数百人が集まったという

04広大な敷地内は腹ごなしの散歩にうってつけ。緑が多いので暑い日は涼を取るのにも最適