文/チョン・ウンスク

 

 20年ほど前、ソウルの地下鉄車内で日本からの旅行者を見ることはあまりなかった。今ほど旅行者の数が多くなかったということもあるが、当時は日本語の案内板もなく日本人には不便だったはずだ。また、タクシー料金が安かったので、気軽に利用できたせいもあるだろう。今やソウルの地下鉄は9号線まであり、外国語の案内板や音声案内も充実していて、車内で日本語を聞くことは珍しくなくなっている。

 そこで今回は、ソウル中心部の地下鉄駅からのアクセスがよく、地元の人にも愛されている食堂を5軒紹介しよう。

 

『平壌冷麺』(東大門歴史文化公園駅5番出口)

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見た目も美しい『平壌屋』のムルネンミョン

 東大門運動場駅から東大門歴史文化公園駅に名前が変わって何年になるだろう。5番を出たら歩道を逆方向に進み、最初の横断歩道を渡ると右手に見えてくる。週末は行列ができていることが多いが、かなりの大箱なので意外と待たされない。

 昨年、冷麺は日本の焼肉店でしか食べたことがないという日本人男性をこの店に案内した。彼はまず、出てきた冷麺のスープが澄みきっていることに驚き、スープを飲んで驚き、麺をすすってまた驚いていた。この店の平壌冷麺が麺国料理とは思えないほど見た目が涼しげで、スープはあっさりしていながら繊細な旨味があり、麺は日本の蕎麦を思い出させるほど蕎麦粉が香ったからだ。

 クラシックな平壌冷麺を味わいたかったら、次項の『乙支麺屋』とともにぜひ一度は訪れてほしい店だ。

 

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大きなマンドゥ(蒸し餃子)も人気

 

『乙支麺屋』(乙支路3街駅5番出口)

 漢江の北側のソウル旧市街には、朝鮮戦争が起きた1950年頃、分断される前の北部から避難してきた人たちが始めた冷麺専門店がいくつかある。

 その代表が『乙支麺屋』。京畿道の議政府に現存する『平壌麺屋』(前項の同名店とは別)を源流とするクラシックな平壌冷麺の老舗だ。店は乙支路3街駅5番から地上に出て、そのまま歩道を数メートル進んだ右手。入口は工具店の間に挟まれた細い通路の奥にあり、気を付けていないと通り過ぎてしまう。

 

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『乙支麺屋』の入口につながる通路
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内装もクラシック

 この店では、クラシックな冷麺店にはかならずあるピョニュクとかスユクと呼ばれる茹で豚肉焼酎ビールを飲み、最後に冷麺で〆る“先酒後麺”を楽しんでもらいたい。素材をひとつの器や鍋に入れ、カオス状態で食べるという韓国料理のイメージが大きく変わるはずだ。

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茹で豚肉でまずは一杯

06看板商品のムルネンミョン