ゴールデンウィークを前に、府民割(正式には「きょうと魅力再発見旅プロジェクト」、覚えにくい&長い)を利用し、京都北部にあるかやぶき屋根の里・美山と日本三景・天橋立を旅してきた。

 平日でも人出はそこそこあり、観光バスの姿も。日本全体が不安に覆われていた2年前の春とは違う、「ちょっとずつ動いている」感がなんだかうれしかった。

美山は50戸のうち39戸がかやぶき屋根という集落で、国の伝統的建造群保存地区に選定されている。春は花、冬は雪景色と四季おりおりの美しさが楽しめる
美山民俗資料館には、建物だけでなく各家に残っていた農具やおもちゃ、服など貴重で懐かしい資料が展示される
天橋立のそばに建つ室町時代建立の智恩寺。扇子型のおみくじがかわいい
全長3.6キロの天橋立は、上からの眺めもいいが気持ちいい散策路でもある。5000本のさまざまな形の松の木は見応えがある

「タイオンハ セイジョウ デス!」

 すっかり耳慣れてしまった機械音声に許され、宿のチェックインへと進む。

 近ごろどこに泊まっても気になるのが感染対策。美山でも天橋立でも、検温・手指消毒の流れ、ビュッフェの手袋や広いテーブル間隔、大浴場でのスリッパ消毒……あらゆるところで感染を防ぐ工夫がなされている。2年前は手探りだったはずの対策の「こなれ感」が試行錯誤を物語っていて、(……お疲れ様……)と心でつぶやく。

「京都はいかがですか?」

 宿の夕食会場。同年配らしき女性スタッフに京都市内から来たと話すと、問い返された。意図が分からず、

「えーと、感染者は減ってますが人出はいまいちです」

 一般的な回答をしてみたら、

のころは、河原町もにぎやかだったでしょうね」

 と、ぽつり。

 聞けば、もともと京都市内在住で、誰もが知ってる高級外資系ホテルに勤務していたが、コロナ禍でいろいろあって退職しこの地に転居。自然豊かな環境でマイペースで働くという、望んでいたとおりの暮らしだが、近所にコンビニもない生活に、

「ときどき河原町の交差点やホテルのフロントが夢に出てくるんです。忙しさも人混みも懐かしいなー、って」

 と苦笑する。

 あんなちっぽけなウイルスのくせに、コロナ禍は人の命だけでなく、たくさんの人生も動かした。わが宿でもこの2年、何人ものスタッフがさまざまな理由で現場を去った。応援したくなる門出やら、自分のふがいなさに情けなくなることやら、どうにもならない状況が悔しくて歯がみすることやら……でもまあ、しゃがんで愚痴っていても天から何か降ってくるわけでもないし、道があるところをぼちぼちと歩いていくしかない。

5月の鴨川デルタ。新緑の京都散歩は気候もすがすがしく、どこまでも歩ける気がする