Dudu Tassa & The Kuwaitis(ドゥ・ドゥ・タサ&ザ・クウェーティーズ)

 午前5時、メインステージで締めのサンライズ・コンサートが始まった。登場したのは「Dudu Tassa & The Kuwaitis(ドゥ・ドゥ・タサ&ザ・クウェーティーズ)」。「クウェーティーズ=クウェーティー兄弟」とは、1940年代にバグダッドで活躍したユダヤ人の作曲家、ダウードとサラーハのクウェーティー兄弟を指す。バグダッドで無数の曲を発表し、彼らの曲は当時のイラク国王にも愛されたが、やはりイスラエル建国にともない、ユダヤ教徒の彼らはイラクの国籍を剥奪され、故郷のバグダッドを追われてしまった。イスラエルに移住した二人は音楽活動を諦め、失意のままこの世を去っていった。そんなクウェーティー兄弟の曲を、ダウードの孫で現代の人気シンガーソングライターとなったドゥドゥ・タサが、アラブ音楽に精通したパレスチナ人の演奏家たちとともに演奏するのがこのプロジェクトだ。

 僕は2012年のエルサレムで、ファーストアルバムを発表した直後の彼らのライヴを観ていた。その時のことは拙著『ジャジューカの夜、スーフィーの朝 ワールドミュージックの現場を歩く』(DU Books)に詳しく記した。その後、彼らは二枚目のアルバムを発表し、レディオヘッドの前座として全米ツアーを行い、世界中のワールド系フェスティバルに出演していた。

 ドゥドゥはエレキギターをハードに弾きながら、祖父兄弟の曲をアラビア語で歌う。イスラエル人として育ったドゥドゥはアラビア語を解さない。それでも彼は現代アラブ音楽における最高の歌手たちにまったく引けを取らない歌唱力でアラビア語の歌を歌う。

 バンドはアラブ音楽に欠かせないカヌーン、ヴァイオリン、チェロ二台を中心に、ドラムス、エレキベース、キーボード、さらにゲストのパレスチナ人女性歌手という編成で、時に打ち込みを用いながらも、イスラエルらしい質実剛健な演奏を繰り広げる。5年前と比べると、グルーヴが増し、圧倒的な説得力が生まれていた。ドゥドゥはクウェーティーズのサウンドを「イラクン・ロール=イラクのロックンロール」と呼んでいる。現在のイラクやアラブ諸国には存在しない、唯一無二のイラクン・ロールである。

 午前6時20分、夜が明けて、白んでいく空をバックにドゥドゥ・タサ&ザ・クウェーティーズの演奏がクライマックスを迎えた。長い、最高の夜だった……。

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サンライズ・コンサートに登場したドゥ・ドゥ・タサ

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アラブ音楽に精通したクウェーティーズの面々

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いつの間にか夜が明けてきた 

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サンライズ・コンサートの最後まで残った観客たち