文と写真/田島麻美

 

6月に入り連日30℃超えの真夏日が続いているローマ。今年は5月から35℃を記録するほど暑い日が続き、初夏というよりまるで8月中旬のように感じられる。「このままいくと、7・8月には45℃を超えるね」と、人々はぐったり顔で口にするようになってきた。

夏の猛暑が続く間、イタリアでは太陽が出ている日中は窓を閉め切った屋内で過ごし、日が暮れると窓を一斉に開け放って涼しい風を家中に通すのが習慣となっている。人々の活動時間帯も陽が落ちてからの夜が中心となるため、オフィス勤めの人は夕方帰宅してから軽く仮眠し、夕食を食べてシャワーを浴びてから夜の街へ出かけていく。涼しい夜風に吹かれながら、ライトアップされた美しい街をそぞろ歩くのが、夏の夜のローマの一番のお楽しみなのである。

 

中世時代の街並みが今も残る下町トラステヴェレ。石畳の細い道が迷路のように入り組んでいて、とても情緒がある。夜風にのって漂うジャスミンの香りが路地を満たし、なんとも言えないロマンティックな雰囲気を演出してくれる。

 

 4月1日に非常事態が解除されて以降、日常生活の中で課されていたさまざまな行動規制も段階的に解除されてきている。5月1日からはマスク着用義務もなくなり(但し、交通機関や屋内のイベント会場、医療機関などでは引き続き6月15日までマスク着用が義務付けられる)、6月1日からはイタリア入国時に必要だったワクチン接種証明書の提示も不要となった。街角には楽しそうにバカンスを満喫するツーリストがあふれ、かつてのにぎやかなローマが戻ってきた。

 

 6月最初の土曜日の夜、2年以上のブランクを経て、親しい友達グループと再会を果たした。コロナ禍でそれまでの習慣が一変し、大勢で食卓を囲んだり、顔をつき合わせて延々とおしゃべりに興じることを躊躇するようになったイタリア人も多かったので、この日の再会は特別なイベントになった。

 トラステヴェレの狭い通りを人混みをかき分けながら進んで約束のレストランに到着すると、約15名の参加メンバーの大半はもうテーブルに着いていた。久しぶりの再会に思わずハグしそうになったが、実際にハグした友達は3人。後のメンバーはちょっと離れたところから盛大に手を振って弾けるような笑顔で「チャオ‼︎」と挨拶するにとどまった。ちょっとしたことかもしれないが、かつてのイタリア人の習慣からすると、これはコロナ禍がもたらした非常に大きな変化だと肌で感じる。

 



屋外ではマスク姿の人は皆無。誰もがコロナ禍以前のようにリラックスして、夏の長い夜のひとときを仲間や家族と満喫している(上)。ツーリストや若者の熱気で溢れかえる下町トラステヴェレの細い路地(下)