今回の旅の目的地は下越の新発田です。東京から新潟まで新幹線で出かけ、新潟から羽越本線に乗り換え、急行で30分ほどの旅です。ここに全国有数の江戸前鮨の店があります。その名を「登喜和」といいます。

 はじめて出かけたのは5年ほど前、越後湯沢の宿「里山十帖」主人岩佐十良さんの強いお勧めで、出かけました。岩佐さんは新潟の食のレベルの高さを知らしめようと、県の各地をくまなく食べ歩き、それを「新潟美食手帖」としてまとめました。その中に掲載されていた1軒ですが、じつをいうとあまり期待せずに店ののれんをくぐりました。新潟・新発田と「江戸前鮨」がつながらなかったためです。

 カウンター席につき、簡単な挨拶をすませると、若き主人が鮨を握り始めました。その最初の一貫を口に運ぶと、酢飯に酢がきちんと利いているではありませんか。東京の名だたる店でも、最近は、酢飯にメリハリがなく握りを6つも摘まめば、口が飽きてきてしまうことが度々です。

 「酢飯がとても美味しいです!でも、皆さん、酸っぱいとおっしゃいませんか?」と切り出すと、
 「皆さん、そうおっしゃいます。でも、私、直しません」

 この一言を聞いて、俄然、嬉しくなり、気持ちが前傾姿勢になりました。鮨種は新潟、佐渡に揚がった魚を中心に、一塩するなどの仕事をして握ってくれました。

 お仕舞いになって、若き主人が「私、服部(栄養専門学校)出身で、山本さんの授業を受けました!」と自己紹介、これで二人の距離がいっぺんに縮まりました。

 今回は3度目の訪問なので、おたがい心地よい緊張感で素敵な時間を楽しみました。あらは昆布出汁の塩水で漬けたもの、佐渡のまぐろは1週間寝かせて握り、そのにぎりの美味しかったこと! また、赤いかの身の甘かったこと!かすご(小鯛)やきすも絶妙の味わい、どれもこれも、酢飯がきちんと利いているからこその味わいです。

「鮨登喜和」あら昆布出汁塩水漬け
「鮨登喜和」佐渡の中とろ
「鮨登喜和」赤いか
「鮨登喜和」かすご(小鯛)

 

鄙にも稀なと言っては失礼ですが、新発田で味わえる見事な「江戸前鮨」です。

「これだけ見事な鮨を握れるのですから、かつての名人たちの仕事を振り返り、クラシックの鮨を勉強すると、さらに美味しくなるように思います」という言葉をご主人小林宏輔さんに残して、店をでました。

「鮨登喜和」のご主人 小林宏輔さんと