文/光瀬憲子

 

 先日、都内のビストロ風居酒屋でレンコンのつまみを頼んだ。焼いたレンコンのスライスに粉チーズのようなものがかかっていて、ちょっとピリ辛だ。何だろう、この香り…? 懐かしい気がするけど思い出せない。

 店員さんに聞くと、カラスミパウダーだという。この絶妙な塩加減と磯の香りは、確かに台湾でよく食べていたカラスミだ。ワインが豊富な店で、気持ちがぐっと台湾に引き寄せられた瞬間だった。

 視覚や聴覚だけでなく、嗅覚で強烈に思い出がたぐり寄せられることがある。台湾ではよく旧正月にカラスミを食べていた。新年の贈り物の定番で、赤と金の派手な箱に仰々しく入っている。台湾ではもっぱら、薄く切ったカラスミのスライスに生の大根やニンニクの薄切り乗せて食べていたが、日本でこんなおしゃれな食べ方に出合うとは。その店ではパスタやポテトサラダにもカラスミを使ってコクを出していた。

カラスミのスライス、生ニンニク添え