文/光瀬憲子

 

 夏の台湾取材は過酷だ。どこへ行っても太陽が照りつけ、アスファルトが足元を燃やしているように暑い。いや、熱い。でも、夏だからこその楽しみもある。フルーツだ。

 台湾で暮らし始めてすぐに、台湾水果(フルーツ)のとりこになった。日本でおなじみの桃や梨も、台湾のものは段違いにおいしい。そして何より、日本ではあまり食べられないフルーツがふんだんにある。ドラゴンフルーツ、パパイヤ、釈迦頭、蓮霧など日本では見たことがないものが店頭に並んでいる。

台湾南部の台南高雄ではこうしたフルーツプレートによくお目にかかる。台湾ではトマトもフルーツ扱い
台湾南部のバナナ。ねっとりとした濃厚な舌触りと甘い蜜は日本で味わったことがない

■ライチ

 90年代に台湾に住むようになって最初にハマったのはライチだ。

 先日、横浜の中華街を歩いていたら、青果店の店先にライチを見つけて衝動買いした。台湾では、ライチの季節は5月〜6月頃で、トラックの荷台に山積みされて路上で販売される。当時は1籠100元ほど(400円強)だったと記憶しているが、年によってバラつきがあった。初めてライチを口にして、そのみずみずしさとプリプリした食感と甘い香りに惚れ込んだ。連日、何十個と実のついた房を買っては1人で抱え込んで食べていたら「ライチは食べすぎると鼻血が出る」と元夫に止められたほどだ。

横浜中華街の製菓店で買ったライチ。みずみずしく、甘さも十分

 ライチと鼻血はけっして都市伝説ではなく、根拠がある。漢方では食べ物は寒性と温性に分かれていて、多くの果物は寒性。体を冷やす作用があるので夏に食べるとほどよく体内の熱を取ってくれる。

 でも、ライチは果物のなかでは珍しく温性なのだ。だから食べる人によって、体質に合わず、体内に熱がこもって鼻血が出たり、倦怠感が出たりすることがあるという。でも、当時の私は「鼻血が出てもいいから今だけしか食べられないライチを好きなだけ食べたい」と押し切った。