■本物のトルコ料理を現地で食べる食い倒れ出張へ

 こうした活動を一年近く続けているうち、水野さんたちから、トルコで本物のトルコ料理、特にケバブを食べ尽くしたいので、ぜひ連れていってくれと頼まれた。これまで水野&シャンカール組は東京スパイス番長の仲間たちと何度もインド亜大陸に出かけ、食い倒れ出張を続けてきた。今回はザ・ハーブスメン名義のトルコ料理版というわけだ。毎回中東に出かけて、美味しい料理に出会う度に、この味をもっと多くの友人たちに知ってもらいたいと思っていた僕には願ったり叶ったりだ。そこで、キレドの畑作業がそれほど忙しくない6月中旬に一週間ほど、水野、シャンカール、栗田、サラームの4人でトルコに行くことにした。

 どの店でどんな料理を食べるかを決めるのはもちろん、30年以上もトルコに通い続け、イスタンブル中心にひたすら美味いモノを追求してきた僕の役目である。これまでの自分の著作や原稿、ここTabilistaでの連載などを読み返し、撮りためた料理写真を見直して、下記の8つのテーマを書き出した。いわば僕のトルコ通いの集大成的な美味いモノセレクションである。あ、ここ重要だから赤線引いておいて!

*炭火焼きケバブ Kasap Osman
*老舗メイハネでメゼ三昧 Yakup 2
*庶民派ロカンタで煮込み系料理 Karadeniz Lokanta
*カドゥキョイでストリートフード食べ歩き Kadikoy
*15世紀のレシピ、オスマン宮廷料理 Asitane(休業)
*モダントルコ料理とトルコのナチュラルワイン Neolokal
*アラチャトゥでハーブ三昧のエーゲ海料理 Asma Yapragi
*アラチャトゥの宿で世界一の朝食 Villa Taraca

 テーマとお店が決まったら、移動時間やお店の場所や定休日を調べ、料理のバランスなども考慮しながら、Googleスプレッドシートで作った一週間のスケジュール表に並べていく。そして空いた隙間に優先順位の低いお店や場所を当てはめていく。簡単なように思えるが、定休日や営業時間を考慮せずに埋めていっても、やはり上手くはいかない。食べる順番も意外と重要だ。時間どおりに到着してもお腹が減っていなかったら意味がないからだ。まあ、このメンバーにとってお腹の減り具合に関しては、心配は全く無用だったことが現地に行って初めてわかるのだが……。また、酒好きのメンバーが多いだけに、アルコールを飲める店と飲めない店の区別も行っておくほうが良い。

これが綿密に準備したスケジュール表。30年以上もトルコに通い続けたサラームが全霊を込めた会心の美味いものリスト!

 

 宿は栗田さんがAirB&Bで見つけてきたガラタ塔徒歩1分の距離にある、130平方メートルの3LDKのアパートホテルを予約した。ガラタ塔は原宿竹下通りや週末の鎌倉や京都ほどのド観光地だが、新市街、旧市街、アジア側に渡るフェリー乗り場など、どこに行くにも交通の便が良い。そしてアパートホテルには大きな冷蔵庫やキッチンが付いているので、作る気になれば料理も出来る。ただ、ベッドルームが3つしかないので、全部の日程を4人が泊まるのはちょっとキツイ。そこで途中3泊は、僕が近くのホテルに泊まることにした。

 宿さえ決まれば、後は4人がそれぞれ日程を合わせて飛行機を予約して、現地集合すれば良い。急激な円安とウクライナ戦争に伴う原油高でイスタンブル往復の航空運賃は高騰してしまったが、僕はこのツアーの話が出た今年の頭にはすでにターキッシュ・エアラインズの直行便を予約しておいた。水野さんはフランスに前乗りしてから、イスタンブルに戻る便を押さえていた。シャンカール&栗田組も乗り換えはあるものの、格安な湾岸系の航空会社の航空券を見つけ予約できた。そして6月11日には全員がイスタンブルの宿に現地集合し、18日以降それぞれ別々に帰国するスケジュールが決定した。

 さらにこの頃、スパイスとハーブを求めて世界を旅をする水野さんに、某テレビ局のテレビクルーが同行することが決まった。長年一匹狼ならぬ一匹羊のフリーランスとして生きてきた僕は、テレビの取材依頼が来たら、何はなくとも「だが断る!」と決めている。ラジオなら音声だけで済むが、テレビは撮影とその準備に大きく時間が取られる。それが大嫌いだからだ。今回メンバー4人はそれぞれ忙しいスケジュールをやりくりして、自費でイスタンブルに集まる。時間こそ最も貴重なのだ。撮影待ちなどに無駄な時間を一瞬たりとも奪われたくはない。

 そこで、水野さんと番組ディレクターとミーティングを行い、その後もスケジュールのすり合わせを入念に重ねた上で、撮影関係の無駄な時間を一切受け付けないという条件で、7日間のザ・ハーブスメン・トルコ食い倒れツアーに4日間のテレビ撮影を無理やりガッチャンとドッキングさせた。そうは言っても、全員旅慣れたオトナだし、僕は勝手知ったるイスタンブルの街、多少は待たされたところで臨機応変に対応出来るし、それにテレビカメラが入ることで、これまで一般のお客として訪れただけでは知ることができなかったトルコ料理の一面が見えるかもしれない。何よりもトルコ料理〜中東料理の美味しさが日本のお茶の間に少しでも広まるのは嬉しい。僕がこれだけ活動してきたにも関わらず、日本の一般レベルでは未だにドネルケバブとサバサンド、トルコアイスだけがトルコ料理だと思われているだろうし……。まあ、物事の良い面を見るようにしよう……。

こうして6月9日木曜夜、僕は羽田空港からイスタンブルへと半年ぶりに旅立った。

イスタンブルのガラタ塔徒歩一分に位置する130平方メートルのアパートホテルのリビング。ここからザ・ハーブスメンのトルコ食い倒れ出張が始まる!
夜のガラタ塔周辺

(次回に続く)