カニとエビ、醤油漬けで個性くっきり

 韓国料理になれた日本の人でも目の色を変える食べもののひとつがケジャン。特に醤油で漬けたカンジャンケジャンは嫌いという人に出会ったことがない。木浦の名店『忍冬酒マウル』では、カニだけでなくエビの醤油漬け(カンジャンセウ)もいただくことができた。どちらにも甘味、塩味、苦味、酸味があり、それが入り混じった旨味もある。

 どちらかに軍配を上げるならやはりカニだろう。エビの味噌は苦みが際立つのに対し、黄色とオレンジ色のカニ味噌には濃厚な甘味があり、醤油のたまった甲羅の部分にごはんを入れて食べると、止まらなくなる。

 

『忍冬酒マウル』のカンジャンケジャン(カニの醤油漬け)

『忍冬酒マウル』のカンジャンセウ(エビの醤油漬け)

マッコリの旨さは味のみにあらず

 韓国全土でマッコリを飲み歩いてきた。

『マッコルリの旅』という本の取材をしていた2006年頃は、半島北部で飲んでも、南部で飲んでも、地酒というには個性が乏しい感があったが、2009年の空前のマッコリブームを経て、マッコリで村おこしのような運動が起きると、用いる素材や味に明確な特徴が出てきた。

 今では首都ソウルに居ながらにして、全国各地のマッコリを楽しめるようになった。最近は鍾路3街にあるような外国人観光客を意識していない酒場でも、各地のマッコリが7、8種類置かれていたりする。

 しかし、その出自が農民の酒、労働者の酒であるマッコリは、酒自体の味よりも「どこで、誰と、どんな雰囲気で飲むかが重要であり、ワインのテイスティングのようなことをするのは野暮」という考えは今も変わらない。

 農民が疲れとノドの渇きを癒し、ほろ酔いのまま畑で昼寝をして体力を回復させるために飲んだのがマッコリだ。これほど自然とともにある酒はない。

 その意味で、海南郡の醸造所『ソン・ウジョン発酵名家』でいただいたマッコリは、酒自体の味もさることながら、背後に山を望む庭先の東屋で、醸造者の話を聞きながら昼酒を楽しむという最高のお膳立てで、忘れられない時間となった。

 

海南郡の醸造所『ソン・ウジョン発酵名家』のマッコリ。左から紫芋、米、ウコン
韓服姿で迎えてくれた『ソン・ウジョン発酵名家』のソン・ウジョン代表(中央)