文/光瀬憲子

 

■カジュアルな信仰心

 先日、久しぶりに小田原にある母の実家を訪れた。小学生の頃は頻繁に里帰りしていたが、徐々に行かなくなり、今回は4、5年ぶりだ。実家はお寺で、子供の頃は線香の香りが染み付いた広い本堂がちょっと怖かったのを覚えている。本堂で走り回るなとよく言われていたけれど、やんちゃな従兄弟たちとバタバタと追いかけっ子やかくれんぼをしていた。私は仏像が鎮座する奥へはあまり近づきたくなかった。

 台湾で初めて訪れたお寺は、台北の郊外にある大きな廟。元夫と知り合った頃、彼が連れて行ってくれたのだが、最初はそこが寺だとはわからなかった。中国語があまりできなかったせいもあるが、高台にあるその廟の周辺には出店がいっぱい並び、縁日のように賑わっていたからだ。

 母の実家の寺のような厳粛な雰囲気はかけらもなく、廟そのものも赤やオレンジ色を中心とした派手な色使い。お香の香りが漂っているのは同じだけれど、明るくて庶民的な印象だった。

 日本にも観光地として賑わう寺や神社はあるけれど、台湾の廟はずっとカジュアルだ。

廟にはいろいろな人が訪れる。デートで訪れるカップルもいれば、真剣に祈る姿も