■台湾の廟が教えてくれたこと

 かつて、ご利益があると言われる台湾北部の廟を訪れたことがあった。十八王公廟という小さな廟だ。ここはちょっと変わっていて、犬と17人の漁師が祀られている。犬と人を合わせて「十八王」なのだろう。何百年も前に海で遭難した彼らの墓がそのまま廟になった場所で、観音様や媽祖様を祀る廟とは違い、実際の墓にはどこかひんやりとした空気が感じられる。少しだけ母の実家の本堂の雰囲気と似ている気がした。

台北郊外にある十八王公廟。犬が祀ってある珍しい廟で、週末などは観光客で賑わう
学業の神様には受験票も添えて。台湾も学歴社会なので学生やその家族の祈りは真剣

 従兄弟たちは寺を継いで和尚になったが、私は信心深いわけでもなく、時折墓参りに行く程度だ。それでも台湾の廟が好きになってから、そしておそらくは年齢を重ねたから、ご先祖様や神様の存在を以前よりも身近に感じられるようになった。台湾のカジュアルな信仰というものが心地よく感じられるようになったのだ。占いや風水を信じるわけではないが、神様やご先祖様と同じように、その存在を意識することで、ちょっとだけ気持ちが豊かになるように思うのだ。酷暑の中、地元ではもうすぐ8月のお盆がやってくる。今度は両親を連れて、ごく近所にあるお墓参りに行く予定だ。

屋台が並ぶ廟前。廟は人が集まるところなので、少し規模のある廟の周辺には必ず美味しいものがある

 

 

*本コラム筆者のオンライン講座

 7月16日(土)、9月17日(土)のそれぞれ18時30分~20時、光瀬憲子のオンライン講座があります。テーマは「知識ゼロからの台湾」。90年代から台湾と関わり、現地で就職や結婚も経験した講師が、言語や民族、社会や文化など、旅するだけではわからない「等身大の台湾」を語ります。主催は朝日カルチャ―センター。9月17日だけの受講も可能です。詳細は下記でご覧ください。

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