東京メトロの丸ノ内線は新宿と池袋を結んでいる――と書くと、東京近辺の人なら当たり前、都内の地理に詳しくない地方の人は「へ~」と思ってしまうだろう。しかし、位置関係を少しかじった程度の人なら、「え!」と驚いてしまうかもしれない。

 山手線なら、池袋駅の次は目白駅、そして高田馬場駅、新大久保駅、新宿駅の順だ。つまり、池袋駅と新宿駅は4駅しか離れていない。にもかかわらず丸ノ内線は、新宿を出発して銀座駅、東京駅、御茶ノ水駅などを経由して池袋駅に到着する(17駅)。

 これは皇居を囲むようにして「コ」の字型に路線が敷かれているからだが、「新宿方面やから池袋も経由するやろ」と思い込んでいる関西人などは、大あわてしてしまうこともありうる。

 その点、大阪の地下鉄なら、そのような間違いを犯すことはない。路線は基本的に、東西南北の碁盤目状になっているからだ。そんな大阪地下鉄(大阪メトロ)の中で、最長路線なのが谷町線である。

 大日駅から八尾南駅まで、守口市、大阪市旭区、都島区、北区、中央区、天王寺区、阿倍野区、東住吉区、平野区、八尾市を結び、その営業キロ数は28.3キロ。そして、大阪で地下鉄の大動脈といえば御堂筋線だが、沿線の特徴でいえば谷町線のほうが上回っているといっても過言ではない。

 そもそも現在の大阪の街並みは、豊臣秀吉が大坂城を築城した際に整えられたものだ。現在の大阪城があるのは「上町台地」と呼ばれる高台で、5世紀ごろまで西側は海、東側は河内湖と呼ばれる湖。そんな土地が治水事業や開拓で陸地化され、さらに秀吉が城下町として整備したのだ。

 谷町線は南北を走る4路線のなかでもっとも東側にあり、上町台地を縦断する。大阪城にほど近く、6世紀末ごろに建立されたとされる四天王寺にも近い。したがって、大阪市内で最古の歴史を誇るエリアといえるのだ。

 そのため史跡や神社仏閣も多く、四天王寺はもちろん、生國魂神社や高津宮、「大坂(大阪)」という地名のルーツとされる「天王寺七坂」も谷町沿線。飛鳥時代と奈良時代の首都であった難波宮跡や大阪城にも近いのは谷町四丁目駅で、大阪天満宮は南森町駅が最寄りであり、天満橋のすぐ近くには淀川舟運の要衝だった八軒家着場がある。

 このような「歴史」に関するものだけでなく、谷町線には「大阪名物」「大阪唯一」と呼ばれる特徴も備わっている。それは「長い駅名」だ。

 大阪府下でもっとも長い駅名が「四天王寺前夕陽ヶ丘」。1968年に開業される際、夕陽丘町に位置することから当初は「夕陽ヶ丘駅」と命名される予定だったが、駅からほど近い四天王寺を駅名にするべきではないかという意見が浮上。しかし、夕陽丘は鎌倉時代から続く由緒ある地名だったため、住民は地名を無視した駅名に反発し、苦肉の策として「四天王寺前(夕陽ヶ丘)」と表記することに決定する。そして1999年にカッコが外されたというエピソードがある。

 このほかにも太子橋今市、千林大宮、野江内代、駒川中野、喜連瓜破と26駅中4文字以上が11駅。谷町〇丁目や天神橋筋六丁目という「丁目駅」を除けば、2つの地名を合わせた駅名だ。路線は2つの地域の微妙な位置を通るため、住民感情を考慮した結果、命名されたのが理由だが、特徴的であることは間違いない。