文・写真/室橋裕和

 

 イスラム教にも仏教と同じようにいろいろな宗派がある。とくに大きな勢力となっているのが「スンニ派」と「シーア派」だ。

 主流はスンニ派である。世界に18億人ほどのイスラム教徒がいると言われるが、うち8割がスンニ派だ。シーア派は1割強に過ぎない。

 その図式は、日本国内に住むイスラム教徒にも当てはまる。日本にはいまや10~20万人のイスラム教徒が暮らしていると推計されているが、この大半はスンニ派だ。そして日本に100以上あるモスクもまた、多くはスンニ派のものなのだ。

 だからここ、茨城県常総市にあるシーア派のモスクはきわめて珍しい存在といえる。正しくは「Markaz Muhammad allay Muhammad japan」といって、常総市の北端に佇んでいる。

常総市は日本でもとくに多様な人々が暮らす街。シーア派モスクはその象徴かもしれない

■集まってくるのは「シーア派のパキスタン人」

 イスラム建築独特の玉ねぎのような屋根がなんとも印象的だ。中にお邪魔させていただくと、絨毯の敷かれた大広間がふたつ、壁に仕切られて続いている。その奥の部屋に進んでみる。壁には一面、コーランの教えを描いた色とりどりのカリグラフィが飾られていた。こざっぱりしたスンニ派のモスクよりも、だいぶカラフルな感じだ。

「ここに集まってくるのはほとんどパキスタンの人なんですよ」

 そう教えてくれたのはセリーム・シャーさん(58)。このモスクを取り仕切っているボランティアのひとりで、セリームさん自身もパキスタン人だ。

 だがシーア派の多く、40%ほどはイラン人だといわれる。そしてイランのお隣イラクや、レバノン、イエメン、インドアフガニスタンなどにもシーア派が暮らす。パキスタンにもシーア派はいるが、割合は国内のイスラム教徒の20%前後で、やっぱり少数派なのだ。その「パキスタン系シーア派」が、日本におけるシーア派のメイン層だという。日本に住むイラン人が少ないからだ。

「みんな、いろんなところから集まってくるんです。東京栃木、茨城のあちこち。私は横浜から」

 とセリームさん。今日はシーア派にとって特別な儀式が行われるのだとか。

モスクの中は広々としていた。関東各地に暮らすシーア派の人々の憩いの場
案内してくれたセリーム・シャーさん(左)と、モスク設立者の息子さん