文/光瀬憲子

 

 台湾は日本同様、自然災害の多い土地だ。小さな島には火山もあるので温泉も出るが地震も多い。そして台風の通り道になっているので、毎年、各地に爪痕を残していく。ここ数年、日本でも大雨や大型台風による被害が増えてきて、台湾の台風シーズンを思い出すことが多くなった。

台風にぶつかり、雨がっぱ姿で九份を散策する人々

■台風が来たら会社も学校もお休み!?

 台湾で暮らし始めた1990年代半ば、夏の終わりに驚いたことがあった。台風が発生すると、テレビのニュースで1日中進路の予想や雨雲の移動を伝えるのは日本と同じ。しかし、台湾では台風予報に加えて必ず学校や会社の「台風休み」の発表が始まるのだ。

 当時の私は台湾の新聞社で記者のインターンをしており、翌日は著名な外国人ゴルフプレーヤーの取材をする予定だった。ところが、前日の夜のニュースで「不登校・不出社」が発表されてしまった。台湾の気象局は、台風の影響の恐れがある各エリアに対して、小学校や中学校などの登校、および企業の出勤の是非を決定する。

 たとえば「台北市は不登校・不出勤」「新竹市は出勤、学校は午後から登校」などと、エリアごとに細かく決められるので、誰もがテレビにかじりついて発表を見守る。

 もちろん、不登校が決まったエリアの子どもたちは大喜び。だが、困るのは学校だけが不登校になり、会社は出勤、という指示が出た場合だ。親は子どもたちを家に置いて仕事に行かなければならないが、幼い子だけを留守番させられるわけもない。気象局にクレームが殺到し、最初の発表からほんの数時間で「不登校・不出勤」に変更になったという例もあった。

 そんな台風休みの決定に伴い、予定されていたゴルフ取材はなくなった。日本では台風で仕事が休みになるなんてことはほとんどなく、電車が動いていれば誰もが早めに家を出たり、完全防備したりして出勤するので、台風ぐらいであっさり仕事が休みになる台湾には驚いた。そしてなんと、翌日、台風は明け方のうちに台湾をかすめるようにして過ぎてしまい、昼間は台風一過の快晴。誰もが休暇をエンジョイした。