——きっかけとなったのはロシアのウクライナ侵攻ではあるけれど、そこをもっと突き詰めていった人間の本質についての問いかけをメッセージとして発信したいと思った、ということでしょうか。

田中:そうです。だから、今回はウクライナの国旗を背景に作品を制作しているけれど、ロシアについては一言も書いた覚えはない。いわゆる「どこが敵でどこが味方か」というような描き方は僕はしていない。ウクライナをきっかけに「戦争とは何なのか」、「戦争を引き起こさなければならない人間とはどういった生き物なのか?」という考え方に基づいて描き続けている。単純に戦争を反対して戦争を引き起こした人たちを避難したい訳ではない。そういうスタンスです。

 人間って、一つ世代が新しくなると、それ以前の出来事はすっかり忘れちゃう。遠い昔の記憶を受け継いでいくということができない。だからエジプトの時代から現在までずっと戦いが続いているわけで、それはもう仕方がない。そんな人間というものは、なんと愚かな、学ばない生き物であるのか。人間って一見、常識のある姿はしているけれど、実はその輪郭というものは非常に曖昧で脆くて変わりやすいものなんだということを、僕は作品の中にすごく雑に人間の姿を描くことで表現した。人間というのは、ボールペンのギザギザっとした荒い感じの朧げな輪郭でちょうど良い、と。それが僕の描く人間の姿。自分の都合に合わせてどんどん解釈や価値観を変えていってしまう人間の曖昧さ、嫌らしさ、脆さというものを細いギザギザした雑な線で描いていって、その姿を人間の代表にしていこう、というのが僕の作品です。


         (※次号「オノ・ヨーコさんも認めた『地球防衛軍』の活動」へ続く

 

ミラノのM.A.D.S.ギャラリー主催による国際展示会『Orizzonti Trasversali』に出展された3作品。『私たちは地球に何をしたの?』(右)をはじめ、脆く曖昧な人間の姿が描かれている。
7月末から8月上旬にかけて、ミラノとカナリア諸島で開催された国際エキシビション『Orizzonti Trasversali』のポスター(M.A.D.S.アートギャラリー)