文/下川裕治 写真/中田浩資

 

沖縄離島のコンビニ事情

 沖縄の離島の人と話をしていると、よくコンビニという単語が出てくる。しかしその話は、いくつもの階層に分かれている。

 今回の旅で宮古島に渡る当日の朝、宮古島に暮らす知人から電話がかかってきた。

「下川さん、いま那覇? ローソンのチーズケーキを買ってきてくれないですか。バスチーって呼ばれるケーキ。すぐにわかると思います。うちの嫁が大好きで」

 これは宮古島、石垣島に限定した話題だ。正確にいうと、そこに久米島伊江島を加えなくてはいけないが。

 つまり沖縄の離島でコンビニチェーンがあるのは4島だけだと思う。久米島と伊江島は僕の記憶では2軒のコンビニがある。

 しかしこの4島のコンビニはすべてファミリーマート。だから、「那覇からローソンのケーキを買ってきて」という宮古島からの会話が成立するわけだ。

 しばらく前まで、沖縄にはファミリーマートとローソンしかなかった。セブン-イレブンが沖縄本島に進出したのは2019年。その後、セブン-イレブンは店舗を増やしているが、まだまだファミリーマートやローソンのほうが多い。しかしそんな選択肢があるのは、那覇がある沖縄本島だけ。離島のコンビニという話になるとローソンが脱落。ファミリーマートの独壇場になる。

 しかしそれ以遠の沖縄の離島になると、コンビニ砂漠が広がる。

 以前、与那国島の農協に勤める知人と酒を飲んだことがある。

「用事があって石垣島に行くと、用もないのにコンビニに入っちゃう。ファミマしかないんだけどね。太るからやめようと思うんだけど、どうしてもファミチキが食べたくなる。コーヒーも必ず飲むかな。家でコーヒー淹れて飲むけど、ファミマのコーヒー……ついね。あの機械で買うと、横浜時代を思い出すんですよ」

 ときに泡盛がまわると、高校を卒業して暮らした東京大阪の話になり、やがてコンビニに辿り着く。コンビニのない離島に暮らす人たちにとって、コンビニは本土と直結している。

大量の氷が売られているのを見ると、沖縄のコンビニだと思います