文/下川裕治 写真/中田浩資料

 

■離島の路線バス、バス停名の由来は?

 書籍『沖縄の離島 路線バスの旅』の旅では、延々とバスに乗りつづけた。走るルートを確認し、乗り込んでしまうと、車内ではとくにすることもない。

 乗客が多ければ、彼らの身の動きを観察し、会話に耳をそばだてることもあるだろうが、沖縄の路線バスの乗客は少ない。これは日本の地方都市に共通していえることだが、沖縄の離島の路線バスは、とくに少ない気がする。人口とのバランスだろうか。昼間の時間帯に乗ったりすると、中田浩資カメラマンとふたりで貸し切り状態になることは珍しいことではなかった。

 そんな車内でなにをしていたのだろうか。

 1時間以上走る路線もある。

 しかし乗車しているときの記憶が薄い。おそらく僕は、車窓風景を延々と見つづけていた気がする。
 車窓風景──。そこにはバス停も含まれる。しかし離島の路線バスは、乗る人も降りる人もいないバス停を、徐行もせずに通りすぎてしまうことも多い。家が少ないから、遠くからでも、バスを待つ人がいるのか、いないのかがわかるのかもしれない。いや、それ以上に、乗り込んでくる客情報が、運転手の脳にはインプットされている気がする。

「次のバス停では比嘉のオバァがときどき乗ってくる」

「下地の家の高校生の息子は、ドンキの前から乗ってくることが多い」

 離島の路線バスは島のバスなのだ。

西表島の白浜バス停。一応、日本最西端のバス停ということになっている