文/光瀬憲子

 

 先日、古民家カフェで抹茶をいただく機会があった。シンプルな茶室で、和服を着た茶道の先生にお茶を点ててもらったのだが、茶道の「さ」の字も知らない私は、お茶菓子を食べるタイミングや茶碗の回し方など、とまどってばかりだった。

小さな急須と茶杯でいただく烏龍茶。ぎゅっと固まった茶葉は、ほんのひとつまみでも急須の中でいっぱいに広がる。4~5回繰り返し淹れられる
同じ茶葉からできる中国茶も、焙煎方法や揉み具合でぎゅっと固まったり、ふんわり仕上がったりする。写真はいずれも文山包種茶

■おしゃべりをしながら楽しく飲む。これが台湾の茶道

 台湾で暮らしていた頃、台湾茶道の教室に通ったことがあった。抹茶ではなく、中国茶の茶道である。

 お茶の種類や製造方法から、茶器の文化、中国茶の淹れ方などを教わったのだが、先生の口癖は「楽しめばそれでいい」だった。日本の茶道と違って、中華の茶道に堅苦しい作法は少ない。茶葉の種類によって適した水温や、繰り返し淹れられる回数の上限などはあるけれど、一番大事なのは「気心の知れた人と、おしゃべりをしながら楽しく飲むこと」だった。

阿里山の茶園を訪れたときは、社長が自らお茶を淹れてくれた

 日本人は烏龍茶を冷やして飲むことが多いが、台湾ではこれは禁忌に近い。もちろん、台湾でもコンビニでペットボトルの烏龍茶が売られているが、人気があるとは言えない。烏龍茶やプーアール茶など、茶色や黒っぽい色をしたお茶は焙煎の度合いが高く、コーヒーで言えば深煎り。寝る前に飲むと寝付けなくなったり、体の芯を冷やしてしまったりする。

 一方、濃い中国茶は油を分解する作用があるので、温めて飲めば胃もたれや、油による食あたりを和らげる効果がある。私は台湾料理が大好きだが、油をたくさん取るとおなかを壊しやすいので、台湾に住んでいた頃は食中や食後にかならず温かい中国茶を飲んでいた。