文・写真/室橋裕和

 

 カトマンズ発、その名も「イエティ航空」の機内サービスは、一杯の水だった。それもそのはず、わずか30分足らずのフライトなのである。それでも小さな飛行機の窓からはカトマンズ盆地の北の彼方に、白銀のヒマラヤが見晴らせた。なんともぜいたくなマウンテンフライトを堪能し、水を飲み干すと、すぐにポカラの空港に着陸した。

 とはいえ、ボーディングブリッジもなければランプバスが来るわけでもない。乗客たちはばらばらと飛行機から降りていく。近くのおんぼろの建物まで歩いて向かうようだ。しばらく待っていると、飛行機に積まれていた荷物がリヤカーに載せ替えられて、職員たちがエッホエッホと運んできた。ネパール第2の都市にある空港とは思えないのどかさだ。

 荷物の山の中から自分のリュックを掘り出して、到着ロビーを出ても、タクシーや客引きが寄ってくるわけでもない。エアポートバスのようなものもなさそうだ。ほかの乗客が迎えに来たクルマに乗って次々と去っていくのを見てアセるが、逆に空港にお客を送りに来たタクシーをつかまえ、どうにか市内までのアシを確保した。

イエティ航空のフライトは片道13000ルピーとややお高かった

■すっかり賑やかになっていたポカラ

 ポカラと言えばペワ湖の湖畔にゲストハウスやレストランや旅行会社が並ぶ、通称レイクサイドが旅人の拠点だ。タクシーはその中心部で降ろしてもらったのだが、僕はあまりの変貌ぶりに戸惑っていた。20年ぶりのレイクサイドは、やたらと賑やかになっていたのだ。

 ネパール人や欧米人の観光客がそぞろ歩く。おしゃれな店もずいぶんと増えた。音楽をガンガン流しているパブとか、クラブのような店もけっこうある。なんだかタイのサムイ島とかプーケット島のようなリゾート地の繁華街のように変わっていた。 

 ポカラの象徴でもあるペワ湖も遊覧ボートがばんばん行きかい、なんだか慌ただしい。20年前、宿で知り合った日本人バックパッカーとボートに乗ってのんびり湖を回ったことを思い出すが、あのときよりポカラはずいぶん観光開発が進んでいた。そしてコロナ禍は過去のものになりつつあるようだ。マスク姿の人はほとんど見なかった。

ペワ湖のほとりに開けたポカラはネパール屈指のリゾート地
ポカラのレイクサイドは店がずいぶんと増えて賑やかになっていた