Netflix配信ドラマ『終末のフール』は、小惑星が地球に衝突(朝鮮半島を直撃)するまでの残り200日を生きる人々が描かれた作品だ。

 主人公セギョン役は『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』『良くも、悪くも、だって母親』『賢い医師生活』、映画『フクロウ─』のアン・ウンジン。セギョンの夫には、『地獄が呼んでいる』『ソウルバイブス』『#生きている』『声もなく』のユ・アインが扮している。

 ほかにも、『ヴィンチェンツォ』のキム・ユネ。『イカゲーム』『海街チャチャチャ』のキム・ヨンオク。『HAPPINESS/ハピネス』『ムービング』『高速道路家族』のペク・ヒョンジン。『財閥家の末息子』『タクシー運転手 約束は海を越えて』のパク・ヒョックォン。『ヴィンチェンツォ』『宮廷女官チャングムの誓い』『ペパーミント・キャンディー』のキム・ヨジン。『ハピネス』『暗数殺人』のキム・ヨンウンなど、個性的な役者がそろっている。(以下、一部、ネタバレを含みます)

韓国人がこの世の終わりに食べたいものは?

 本作のなかでも印象に残ったのが、2話で畑仕事をしながら、「ヨルム(大根の若菜)の季節は終わって、今度は白菜を植えなきゃ。来年の春まで食べるキムチを漬けたら何もかもおしまいさ。もう味噌や醤油を作る必要もない」と、達観したように話していたハルモニ(ソン・ビョンスク)の最終回の言葉だった。

 最終回(12話)は、ドラマの舞台である街の食料雑貨店の常連客たち一人ひとりの終末の迎え方が淡々と描かれ、その静かなエンディングが心にしみた。

 老夫婦のアパートの居間のテーブルの上に薬草酒らしきものの瓶やわずかな穀物の入った袋が並んでいる。そこには「お好きなものをお持ちください」と書かれた紙が添えられている。隣の部屋では、老夫婦が仰向けになっている。

「こうしていても簡単には死ねないもんだねえ」

 二人は数日何も食べず、そのまま最期を迎えようとしていたのだ。しかし、思うようにはいかず時間をもてあましていたらしい。ハルモニは居間の冷蔵庫に向かう。

「おい部屋を出るなよ。このまま飢え死にするつもりだったんだろ?」

 とハラボジ(チョン・ジョンジュン)が言うが、それに対するハルモニの答えが傑作だった。

ピビムククスが食べたいねえ」

 ハラボジが笑う。惑星が降ろうが、槍が降ろうが、お腹は空くのだ。

釜山のヨンジュ市場で筆者が食べたピビムククス(かき混ぜる前)