歴史巨編『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』でナムグン・ミンが演じるイ・ジャンヒョンは、優雅に暮らす才能豊かな男だったのだが、朝鮮王朝が清国に攻撃される中で、持てる能力を駆使して愛する人を守っていく。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』主演ナムグン・ミンの魅力とは?

 ナムグン・ミンは、演じる役の多様性を誇る俳優である。彼が主演したドラマの中では、2019年12月から2020年2月にかけて韓国SBSで放送された『ストーブリーグ』がとても好きだ。

 このドラマは、韓国プロ野球リーグで万年最下位だった「ドリームズ」をフロントが再生させていくストーリーだった。共演は『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のパク・ウンビンだ。

 主演のナムグン・ミンが演じたのは、ゼネラル・マネージャー(GM) のペク・スンスである。野球の経験がないのに、他の競技でチームを優勝させてきたキャリアを買われて、「ドリームズ」の再建をまかされた。

 しかし、球団の親会社は「ドリームズ」を解散させる意向を持っていて、策略の一環としてペク・スンスがGMに起用された。そんな裏事情にも関わらず、彼は抜群のアイディアで「ドリームズ」を生まれ変わらせて、球界に新風を巻き込む。まさに企業の成長物語が『ストーブリーグ』の本筋であり、有能なGMに扮したナムグン・ミンの存在感が抜群だった。

 なにしろ、ペク・スンスは愛想がないし同僚との付き合いも悪い。しかし、本当の「情」を持っており、人間的にも信頼できる。そのように裏表のないキャラクターをナムグン・ミンが独特の感性で表現していた。そこが、『ストーブリーグ』が好感を持って見ることができた理由だった。

 以来、ナムグン・ミンにはずっと注目してきたが、2023年にMBCで放送された『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』は、彼が俳優として培ってきた経験が存分に生きたドラマとなった。ナムグン・ミンは本作で百想芸術大賞の男性最優秀演技賞、MBC演技大賞受賞など数多くの賞を獲得している。

『恋人』の舞台となっているのは、朝鮮王朝が清国から攻められた1636年からの10数年。過酷な歴史の中で、イ・ジャンヒョン(ナムグン・ミン)とユ・ギルチェ(アン・ウンジン)の運命的な愛の変遷を大河の流れのように描いている。

 本来、イ・ジャンヒョンは扇子を持ちながら世の中を斜めに見るような「粋な人」であった。しかし、非婚主義者の彼がわがままなお嬢様のユ・ギルチェと出会ってから、自らの生き方を変えていく。