Netflix配信中の『貞淑なお仕事』は、1992年の田舎町に住む4人の女性(キム・ソヨンキム・ソンリョンキム・ソニョンイ・セヒ)が、貧困からの脱出や自己実現のために成人用品(アダルトグッズ)の訪問販売を始める話だ。

 そのサイドストーリーといえるのが、エリート刑事キム・ドヒョンヨン・ウジン)がソウルから田舎町の警察署に赴任してきた理由である。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『貞淑なお仕事』でヨン・ウジン扮する刑事が赴任してきた理由、多くの韓流作品で題材になっている海外養子

『貞淑なお仕事』第10話で、キム・ドヒョン刑事の物語に大きな進展がある。

 物語の背景にあったのが、海外への「入養(イビャン=養子縁組)」だ。朝鮮戦争後、世界最貧国になった韓国は、売れるものは何でも売って外貨を稼ぐしかない困難な状態だった。

 当時の李承晩(イ・スンマン)大統領が進めた海外養子縁組事業もそのひとつで、戦争孤児を中心とした多くの赤ん坊が海外に送られた。貿易と言っては酷だが、我が国のもっとも悲しい輸出商品である。

 海外入養は、その悲しいドラマ性から多くの作品のモチーフになっている。

 戦争孤児ですぐ思い出すのは、ファン・ジョンミンが主人公に扮した『国際市場で逢いましょう』(2014年)だ。朝鮮半島北部の興南埠頭から船で釜山に避難するとき、運悪く海に落ちてしまった主人公の妹がアメリカに送られたことを覚えている人も多いだろう。

 韓国で生まれたが、3歳でアメリカに養子に出されたジャスティン・チョン監督・主演作『ブルー・バイユー』(2021年)は、主人公が自身も知らない30年前の書類不備で国外追放命令を受け、愛する妻や子供のいるアメリカに二度と戻れない危機に瀕する話だった。

『ウィ・アー・ブラザー!』(2014年)は、海外養子に出され、やがて牧師になった兄(チョン・ジヌン)と韓国でムーダンになった弟(キム・ソンギュン)が30年ぶりに再会する話だ。

 スーパーで万引きした商品を市場で売っていたハルモニ3人組が登場する『ミス・ギャングスター』(2010年)で、いちばん年上のチョンジャ(ナ・ムニ)がハワイに行きたがったのは、養子に出した息子を訪ねるためだった。

 時代は現代の物語になるが、『貞淑なお仕事』ヒロイン役のキム・ソヨンが出演した大ヒットサスペンスドラマ『ペントハウス』でも、海外養子が物語の鍵を握る要素のひとつだった。

 今年大ヒットしたキム・スヒョンキム・ジウォン主演の恋愛ドラマ『涙の女王』では、パク・ソンフン扮する投資家が海外養子という設定だったことも記憶に新しい。