うっかりしている間にもう年末年始。見逃していた韓国ドラマを、お休み中にイッキ見しようと企んでいる人も多いだろう。そこで、2024年下半期作でチェック漏れしているかもしれないちょっぴりマニアな良作をご紹介。年末年始にじっくりハラハラ楽しめる4作をセレクトした。(記事全2回のうち1回目)
■年末年始にじっくり見たい!2024年下半期おすすめ良作選
■『ジョンニョン:スター誕生』
2024年は、これまで韓国ドラマにはあまりなかった1950、60年代を舞台にしたドラマがいくつか配信された。『サムシクおじさん』『搜査班長 1958』、そしてこの『ジョンニョン:スター誕生』だ。
天性の歌声をもつ少女ジョンニョンが、女性国劇のスターになるまでを描いた本作。非常にドラマチックで、一見オールドスタイルのドラマにも見えるが、観進めてみると意外に新たな取り組みもあり、そういう意味でも見応えたっぷりだった。
何といっても目を引いたのは、韓国ドラマで初めて扱ったという女性国劇の舞台を劇中で再現していること。女性国劇とは、韓国の伝統的民俗芸能であるパンソリのミュージカルのようなもので、日本の宝塚歌劇団のように男役も女役も女性がこなす。1950年代に隆盛を極めたが、その後衰退してしまったそうで、それをドラマで見られるとは何と貴重なことか!
ドラマの劇中とはいえ、その迫力たるやすごい。俳優たちはそれぞれ役柄の役作りとともに、女性国劇の稽古も積んだのである。実際に公演をしてしまおうかという話もあったそうだ。なかでも3年間パンソリのトレーニングをしてきたという主演のキム・テリの歌と演技に魅了された。ものすごい気迫である。
また、メインキャラのすべてが女性という部分も驚いた。女性国劇だから当たり前と言えばそうなのだが、これまでの韓ドラであれば、主人公ジョンニョンのそばには必ず彼女を支える見守り男子がいた。だが、本作にはイケメン若手俳優は一切出てこない。
そこを補完するのが、女性国劇の男役というのが新しい。特にあまりのカッコよさに目を奪われるのが、チョン・ウンチェ演じるオッキョン。その姿はまるで、「ベルサイユのばら」のオスカルさま。もともと原作漫画はクィア作品だったという。
ちなみに、主人公のジョンニョンも男役を目指していく。次第に変化していくキム・テリの顔つきや雰囲気にも注目したい。
本作は、かつての韓国ドラマなら、全50話ぐらいにしていたストーリーを全12話でぎゅっとまとめている。そのため、回想シーンにエピソードが足りず、説得性にかけている部分があるのは否めないが、新たな試みをやり遂げようとする製作陣の情熱が全編に渡ってほとばしっている。俳優陣の熱演にも胸が熱くなる。女性国劇の舞台も華やかで、年末年始に観るにもぴったりの一作のように思う。
●配信情報
『ジョンニョン:スター誕生』ディズニープラス スターにて独占配信中
[2024年/全12話]監督:チョン・ジイン『赤い袖先』 脚本:チェ・ヒョビ 『いつかの君に』
出演:キム・テリ『二十五、二十一』『悪鬼』、シン・イェウン『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』『代理リベンジ』、ラ・ミラン『良くも、悪くも、だって母親』、チョン・ウンチェ『ザ・キング: 永遠の君主』、キム・ユネ『終末のフール』
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