去る5月5日にソウルで開催された第61回「百想芸術大賞」放送部門の受賞は、作品賞の『おつかれさま』や男性最優秀演技賞のチュ・ジフンなど、下馬評どおりの受賞が多かった。その中で、今回特に注目していたのが、女性最優秀演技賞の行方だった。
■第61回「百想芸術大賞」発表!注目の女性最優秀演技賞、一騎打ちを制したのは?
芸能界における様々な賞レースを見てきて痛切に思うのは、「無風はありえない」ということだ。かならず特定の作品にフォローの風が吹いてくる。
今回の百想芸術大賞・放送部門ではまさに『おつかれさま』が追い風を受けていた。豪華すぎる出演陣、莫大な製作費、長期撮影による期待感の増幅、直前の3月に一気に配信された有利性……そうした要素が『おつかれさま』の印象度を高めていた。
一方、私が一番期待していた『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』には風が吹いてこなかった。イム・ジヨンが女性最優秀演技賞の候補者にすらならなかったことが、それを端的に物語っていた。
それでも同作は作品賞、脚本賞、女性助演賞、男性新人演技賞にノミネートされたのだが、報われたのは男性新人演技賞のチュ・ヨンウだけ。この受賞は順当すぎる結果であり、追い風の恩恵があったわけではない。全体的に見て、『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』は主要な賞には縁がなかった。
そういう中で、当日の授賞式で最も結果を注視したのが女性最優秀演技賞だった。ノミネートされたのは、以下の5人だった。
IU(『おつかれさま』)
キム・ヘユン(『ソンジェ背負って走れ』)
チャン・ナラ(『グッド・パートナー〜離婚のお悩み解決します〜』)
こうした候補者を見渡せば、多くの人がキム・テリとIUの一騎打ちと考えるだろう。それほど、2人は抜きんでていた。
まずキム・テリから。『ジョンニョン:スター誕生』での彼女は、まさに、女優としての感性を研ぎ澄ました「演技の化身」であった。キム・テリが扮した主人公ジョンニョンは、まるで実際に存在していたかのように視聴者の心に残っている。それこそが演じられたキャラクターの極致であり、それを実現させたキム・テリは無双の女優であった。
しかし、彼女は3年前に『二十五、二十一』ですでに女性最優秀演技賞を獲得している。そのことは決して無視できない。
一方のIUはどうなのか。彼女は『おつかれさま』で、主人公の「オ・エスン」と娘の「クムミョン」という2役に扮していた。時代も生き方もまったく違う2つの役を演じることで、IUは演技者の潜在力を最大限に引き出していた。それが、『おつかれさま』の評価を決定的に高めたことは間違いない。