■豪華俳優を出演させる理由

『龍が如く』シリーズには、渡哲也さんや北大路欣也さん、ビートたけしさんなど、有名な俳優さんの方に出演していただいていますが、これはゲーム内の疑似体験によりリアリティを持たせるため。実在する「今の街」で入れないような店に、ゲームの中で入れる面白さを味わってほしかったんです。

 当時は、ゲームのCMにすら、芸能人があまり出ていなかった時代。芸能人を作中に起用することには批判もありました。でも、「あなたたちだって映画を観に行くときに、俳優や監督で選ぶでしょ?」と。無名の俳優ばかりが出ている映画には、なかなか足を運びにくいですよね。でも、ゲームに芸能人が出てはいけないという。それは悪しき固定観念でしかありません。そんな固定観念が、ゲーム業界を長らく閉鎖的にしてきたのかなとも感じますね。僕は、ゲームだって映画のように、作った人や出演者、内容で選ぶ時代が来ると確信していましたし、実際そうなっていると思います。

 今回、シリーズ7作目となる最新作『龍が如く7 光と闇の行方』がリリースされます。ここまでシリーズが続くと、「途中からやっても楽しめないんじゃないか」と感じる人が少なからず出てくる。そんな人にどう理解してもらうのかが一番の苦労です。シナリオを書くときに、これまでのファンと新たなユーザーの両方を満足させることを心がけていますが、いつも悩みますよね。

 おかげさまで『龍が如く』シリーズは現在、海外でも売れています。こうなると、“次は外国人のキャラを入れたらどうか”なんて言い出す人も出てくる。でも、それをやった瞬間、日本のユーザーは離れると思うし、海外のゲームにも負けちゃうと思うんですね。さらに言えば、前に女性客はターゲットから外したと言いましたが、実は現状、ユーザーの4人に1人が女性です。でも、女性に媚びたシナリオは絶対に書きません。女性客も取り込もうなんて、変に欲を出したらダメ。ちょっとでもブレると、もう売れなくなる。誰も得をしなくなるんですよ。

 僕は、ゲームクリエイターを30年続けてきました。作ることの大変さに集中させてもらえたのは、幸せだったと感じます。最初はゲームセンター用のゲームを制作していましたが、学生の頃に映画の勉強をしていましたから、もっと映像を見せるような作品が作りたいと思っていたんです。そんな中でゲームの技術が進歩して、それが実現できるようなチャンスが訪れた。自分のモチベーションとゲーム業界の進化が、たまたま僕に合っていたんです。それはすごく感謝していますね。

 表現者、もしくはそれに準ずることで飯を食いたいと思う人は、やっぱりいち社会人として「必需品」を作っているとは自分でも思っていないわけです。ただその分、とんでもなくエッジが立っていて高みに近いことが表現できなければ、自分に存在価値がないこともよく知っている。だから、そのためには“もう何だってする”という腹の括り方をしている人たちだと思うんですね。

 でも、そういう人たちって、たとえば言葉遣いがなっていないとか、社会的に見たら欠落した部分が往々にして多い。でも、作ることに才能がある人間は、そこを中心に評価しなくてはいけないんです。クリエイターとして冴えているなら、敬語が使えないから給料を上げてやらないなんて、絶対にあってはならない。“まずは言葉遣いから始めましょう”みたいになることもありますよね。ただ、言葉遣いなんてどうでも良いって思っている人間に言葉遣いを教え出したら、その人が持っている“エッジ”が取れてしまうんじゃないかと。そう、不安になるときがあります。

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