ピエール・リトバルスキー
ピエール・リトバルスキー

(この記事は2018年5月25日に発行された『サッカー批評89』(双葉社)に掲載されたものです)

取材・文・撮影◎遠藤孝輔 Kosuke Endo

W杯で優勝1回、準優勝2回の実績を持ち、Jリーグ創世記に日本でもプレーした名選手、“リティ”ことピエール・リトバルスキー。ドイツと日本の両方をよく知る男に、「なぜドイツが強くなったのか?」を教えてもらった。

 

ドルトムントの監督はなぜ早期解任されたのか?

――クラブに話を移しましょう。ブンデスリーガ勢が今シーズンのヨーロッパカップ戦で大苦戦しました。バイエルンを除き、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグでグループリーグを勝ち抜いたチームは一つもありません。

「そう、バイエルンは別として、全体的に成功しなかった。プレースタイルもあんまり良くなかった。その理由を探るなら、一つずつチームを考察する必要があります。まずはドルトムント。スタメンのチョイスが難しくなりました。まずデンベレがバルセロナに移籍。ロイスはずっと怪我に悩んでいたし、香川(真司)も負傷している時がありました。ゲッツェも病気に罹ったので、長いことピッチを離れていました。そして冬にオーバメヤンがアーセナルに移籍。アタッカーがなかなか揃わず、良いサッカーができませんでした。ディフェンスラインの新しい選手(トプラク、トリャンら)も良くなかったです」

――ピーター・ボス前監督はどう評価なさっていますか?

「オランダ人の監督は基本的にいい指導者です。実際、レッズとのプレシーズンマッチで、ボス監督はいきなり両サイドを使った良いサッカーを見せました。雰囲気も良かったです。レッズ戦の時に、私自身がロッカールームに入って感じましたから。ただ、少しずつサッカーの内容が悪くなり、良い試合と悪い試合の差が激しくなりました。ボス監督は4ー3ー3にこだわりすぎましたね。オランダの監督は4ー3ー3が好きとはいえ、ちょっともったいない。彼はアヤックスでも良い仕事をしていましたから」

――ライプツィヒとホッフェンハイムも期待を裏切りました。

「ライプツィヒとホッフェンハイムは、どちらもベストイレブンは結構いい。でも、バックアッパーが……。土曜、水曜、土曜の試合サイクルになると、チームが機能しなかった。ベストメンバーを送り込んだ水曜のチャンピオンズリーグが良くても、週末のブンデスリーガはダメ。もちろん、ブンデスリーガが一番大事だから、周囲からのプレッシャーが強まりました。監督も悩んでいましたね。どこでベストメンバーを使うべきかと。それからライプツィヒはみんな疲れていました。なかでもヴェルナーは代表チームへの参加もありましたからね。プレッシングサッカーのライプツィヒは前からプレッシャーを掛けて、とにかくよく走る。それに主力の3~4人が怪我をしました」

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