■Jリーグのライバルは映画

ドラガン・ストイコビッチ氏(左)とアーセン・ヴェンゲル氏

――ビッグクラブだと浦和レッズもあります。


杉山  レッズも困っちゃうの。どんなにボロボロでも、地元の人は応援をする。段々減ってるかもしれないけど、いつでもレッズ、レッズって言うんですよ。我々は2部に落ちても応援するから、みたいなこと言ってるんだけど、傍目に見てるとさ、ちょっとさ、あわれっていうか。それでは、もっともっと内向きなってしまう。自分らが満足してればよくなっちゃう。そうじゃなくて、レッズにはぜひ第三者が見ても面白いサッカーを期待したいです。


戸塚  レッズの開幕戦はベルマーレ戦、アップアップでしたね。今シーズンから4バックに変えて、まあ久しぶりに4バックをやっているから簡単ではないんだろうけど、サッカーが面白かったかと言われると、全然そうではなかった。


杉山  スコアだけは面白かったよね(湘南2-3浦和)。展開も面白かったけど。


戸塚  でもまあ、つまらないサッカーしかしなくても、絶対勝利を逃さないっていうチームがあっても、僕はいいと思う。


杉山  そうなんです。だから、色なんです。


戸塚  そうそう。まさに色。色は経営規模とか、どこの町にあるとかっていうものが、色の背景になるわけじゃないですか。やっぱ大きい都市にあるチームは、めちゃくちゃ面白いサッカーをするか、つまらないけど絶対に勝つかっていうのがあってくれないと。


――プロ野球でいう巨人軍のようなチームですね。


戸塚  そういう色がないと、全体が盛り上がらないですよね。


杉山  FC東京もさ、FC東京なんて大それた名前つけるんだったらさ、もっとド派手なことをやってほしい。今シーズンは3人のブラジル人フォワードのスリートップがすごいんだけどね(ディエゴ・オリヴェイラアダイウトンレアンドロ)。あれがどこまで続くか分からないけど、ああいうことをやることが、派手なことをやり続けることが、東京に与えられた使命なんですよ。


戸塚  あれは絶対使命ですよね。


杉山  そう。優勝するかどうかよりも、そっちの方が問題。いつも派手なことをバン! ってやっていかないと。


戸塚  それが大都市の宿命ですよ。


杉山  そう。横浜もそれに次ぐわけで。そういう意味では、横浜の街のカラーは、横浜F・マリノスのサッカーとマッチしたわけですよ。


戸塚  東京に2つあるんだったら、ひとつがバルサで、もうひとつがエスパニョールに。でも現状、FC東京だけだから、東京ヴェルディがエスパニョールかどうかはともかくとして、やっぱまあ、FC東京は大都市のクラブなんだから。


杉山  その自覚がないんですよ。昔、原博実さんが監督だったときは、彼は僕にちゃんとそう言ったんです。東京のチームだから派手にしなきゃいけないって言ってたけど、それは監督が言うことじゃないんですよ。クラブ、会長が言うことなんです。監督が変われば、クラブのサッカー方針まで変わっちゃえば意味がない。そうじゃなくて、クラブのサッカーの方針を言うのはクラブ。それもクラブの上から下まで、みんな同じこと言わなきゃいけない。


――原さんは、「FC東京のライバルは映画だ」というようなことを言っていましたよね。

戸塚  ライバルはJの他のクラブでもなく、プロ野球ということでもない。サッカーはひとつのエンターテインメント。週末、映画館だけじゃなくて、子どもと一緒に、ショッピングモールに行く家族を、いかにJに引っ張って来るかってことですよね。国内的にはそうした視点も大切ですよね。また、対外的にはDAZNを見てもらって、Jは面白いって思ってくれるようなコンテンツにしていかなきゃいけないですね」

※ 杉山氏・戸塚氏対談は今後もアップ予定です。お楽しみに。

 

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