昨季まで横浜F・マリノスのヘッドコーチを務め、今季から清水エスパルスの監督に就任したピーター・クラモフスキー氏 (写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

■W杯は3か月前でも間に合う!?

戸塚  でも結局のところ責任者は森保さんだから、叩かれるのは現状では森保さんなんだろうけど、日本代表チームが機能してないっていうことは、コーチもダメっていうこと。

杉山  うん。で、もっと言うならば、こういうシステムにしてしまっているサッカー協会だってダメなわけですよ。

戸塚  やはり、A代表と五輪代表を兼任するところで、スケジュールの被りは、最初から分かっていたんですけどね。どうするんですかね……。ずっと横内さんに任せていて、森保さんには昨年末ぐらいから関わらせたけど、上手くいかなかったじゃないですか。あれは絶対アテが外れたんだと思う。協会からすれば、まあ大丈夫だろう、と思っていたんだと思います。横内さんは長く五輪世代を見てるし、横内さんと森保さんの関係(サンフレッチェ広島時代、森保監督、横内ヘッドコーチだった)を考えれば、そこの情報共有みたいなものはできているんだろう、というような見通しを立ててたと思うんですよ。ところがどっこい、みたいになっちゃっているのが、五輪代表チームの現状じゃないかなと僕は推測します。

――端的に言うと、チームがまだできてない?

杉山  チームっていうより組織の問題だろうね。

戸塚  だから結局、サッカー協会の言い分からすれば、海外組がいないからって話になるんでしょう。ベストメンバーで1回も戦ってないとか。でもそうじゃないと思う。

杉山  森保監督だって言いたいことはいっぱいあると思うよ(笑)。

戸塚  一番あると思いますね。

杉山  なんで俺、こんなこと言われなきゃいけないんだ!? みたいなのはあると思う。

――でも、森保監督は胸中を中々言えないと……。

杉山  まあ、森保続投か、やめろっていうのは究極の話だけど、それを語る前の前段階とか、その過程もいろいろあるわけじゃないですか。そういうのをしっかりふまえて、やめろっていうのも娯楽だし。それで、続投とやめろ、その意見が50:50で正面衝突するのが一番面白いんですよ。やめろという人がいる、でも、それに異論がある人もいる。それがサッカーで、そこがいいところなんだと思いますよ。

戸塚  確かに美しくて良いサッカーで本番に臨んでもらったほうが、僕らも期待はできるんだけど、でもだいたい今まで結果を残してきたのは、本番直前まで散々叩かれてたチームなんですよね。

――ジーコジャパン、ザックジャパンは良いサッカーで臨み、散りましたね。

戸塚  そうですよね。一方、叩かれたチームだとロシアW杯の西野さんのチームしかり、2010年の南アフリカW杯の岡田武史さんのチームもしかり。手倉森さんのリオ五輪代表だって、U-20W杯に2大会連続で出られてなくて、「今度こそ五輪の連続出場が途切れるかも」って散々言われてた。そういう意味でいうと、杉山さんはあまり共感してくれないと思うけど、僕はメンタル的なところは大きいと思うんですよ。何くそみたいなところが、チームとしてきちんと固まって、それを監督がパーンってうまく叩ければ、チームがうまくいくっていう可能性はあると思います。

 スケジュール面で言うと、コロナがありましたが、日本代表の方は2022年までのFIFAのカレンダーもカチっと決まっているんです。それが基本的に後ろにズレただけなんで。なおかつ、今回は、2022年のカタールW杯は6月じゃなくて11月開催だから、少しズレても間に合うわけですよね。

杉山  そうそう。最後の年の強化ができるんですよ。

戸塚  大陸間プレーオフまでいってしまって、そこにAマッチを組まれなければ、基本的にスケジュールは担保されるので。そういう意味では日本代表については、現状ではそんなに、数試合飛んだからって悲劇的な話ではないと思います。

杉山  だからね、ロシアW杯のときの西野さんの例もあるけど、代表監督は、変な話、最後の3か月を別の人に任せたって良かったりするんですよ。本当にそう思います。僕は、今回は、コロナウイルスの影響で日程が変更になってしまっているから、もうちょっとゆっくりいろいろ考えましょうよっていうのもあるんだよね。これまでは、W杯本大会は6月。そうすると、22年に入ると、もうその年に時間はない。3月に1回くらい試合やって、その後、壮行試合をやっておしまいだった。それが、11月に伸びると、ここにさらに4、5試合は入れられるんですよ。そうすると強化はさらにできるんです。11月だからほぼ1年近いんだけど、22年にチームがちゃんと作れる。だから、22年になっても間に合うんですよ。だから別に、森保続投か否かなんて話が最後まで続いたって面白いわけで。そういう意味においては、彼も大変だと思うけど(笑)。まあ、その立場を受けちゃったからね。代表監督というのは、常にそういうものを言われなきゃいけない立場にある。

 それで、さっきの話に戻っちゃうと、僕が森保さん見たときに、サッカーについて叩きたいんだけど、この人のことを叩いちゃうと可哀相だよね、とか思っちゃうのよね。やっぱり、泰然自若とした人の方が……。

――叩き甲斐もあると?

杉山  そうなんですよね。あまりこちらがゴチャゴチャ言うことに反応するなよ、みたいな気持ちも半分あるわけ。半分は言うけど、半分は反応するなよ、みたいな。微妙ですよね(笑)。

――(笑)。東京五輪は来年夏の開催予定になりましたが……。

 

※ 杉山氏・戸塚氏の日本代表談は後編に続きます。ぜひご覧ください。

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