■すべてが食とつながるミステリー

 表参道にて探偵事務所を営む超美食家の明智五郎。彼の元にある日、旦那の浮気調査を依頼する地味な女性が訪れるところから物語は始まりました。この女性こそ、これから起きるさまざまな事件を裏で引き、明智の最大の敵となる「マリア」になることは第1話では誰も分かりませんでしたね……。

 明智が依頼を受け調査を始めると、昼休みに旦那が若い女の子の家に毎日通っていることが判明。それを女性に伝えると、翌日には旦那は刺殺されてしまいました。

 犯人はその妻。理由は、旦那が浮気したことではなく、自分には味噌汁や焼き魚ばかり作らせて、自分の知らないところでは、スパイスや香草がたっぷり入った手料理を食べていたことが許せなかったこと。犯人が妻であることに気づいた明智は、彼女をレストランに誘い、最後の晩餐を楽しむのですが、旦那を殺した妻はつきものが取れたように美しくなっていました。

 その食事の後、妻は崖から身を投げたように見せかけ、海外へ逃亡し、「Maria Magdalene(=マグダラのマリア)」と名乗り、明智にもう一度会いたいという思いで、殺意を抱く人々に手を貸し、それから起こる事件の暗躍者となるのです。

■登場人物たちの忠実な誇張

 マリアの手引きにより、明智の前には偶然にしろ必然にしろ、さまざまな事件が起きていくのですが、人にとって「食」がどれだけ関わっているのか事件の理由から感じることができます。

 第一話にて「食事は どちらかが死ぬまで続く大事な夫婦の営み」というマリアの言葉にもありますが、その後起きる事件の発端は、「性」の裏切りではなく、「食」の裏切りです。

 すてきなキッチンライフを夢見ていた夫婦に送られてくる、姑からの手料理の小荷物。それをこの物語では「キッチンハラスメント」というショッキングワードとして名づけ、1つの殺人事件が生まれています。

 そして今作品の見どころは、ワクワクするキャラクターたちの掛け合わせ、にあります。このようにマリアの手引きの元、殺人を犯した、林檎、シェフ、れいぞう庫といったチームマリアの面々。

 ミステリーといったジャンルであるからこそ生まれる、ふだん出会うことのない重さを持ったキャラクターたちと、明智の助手として働かされるお弁当屋さん小林苺や、ドラマ版ではメインキャラとなった、苺の友達、桃子。こういったポップなキャラクターたちとが、漫画から飛び出し、忠実さを持ったまま誇張され、重厚感と軽快さがドラマで表現されています。

 その脚本や、演技力を持った俳優の皆様を掛け合わせたバランスの良さに、ドラマの中に東村先生ワールドを見ることができるのです。

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