■「ベスト8進出」がコロナ禍で霞んでしまった

 2019年の暮れに中国・武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、中国や東アジアでの感染拡大に続いてイタリアに飛び火して感染爆発を起こした。とくに北部、ロンバルディア州は感染拡大の中心地で、イタリアでこれまで確認された死者数の約3万5000人のうち、ロンバルディア州だけでその半数ほどの約1万7000人が死亡している。

 その感染拡大の中心地の一つが、ベルガモだったのだ。

 最近の報道では、ベルガモの人口の50%以上が新型コロナウイルスに対する抗体を持っていた。つまり人口の半数以上が感染を経験していたという。

 新型コロナウイルス感染症は、その後、アメリカから中南米、アフリカなどで拡大し、イタリアを含むヨーロッパは現在は比較的落ち着いた状況にある。

 だが、新型コロナウイルスの存在が確認された直後で、感染症に関する詳しい情報もない中で感染の拡大を経験したロンバルディア州の人々が、どれだけ苦しみ、恐怖に襲われたのかは伺い知れない。

「ベスト8進出」というアタランタの快挙は、その当時はかすんでしまったのだ。

 そうした災厄に対して、スポーツというのは実に無力なものだ。「スポーツが人々に勇気を与える」というのも一面の真理ではあるが、ある意味で、それはスポーツ界の思い上がりのような気もする。

 しかし、たとえばベルガモという街が災厄に見舞われた時、「アタランタ・ベルガマスカ・カルチョ」という魅力的なサッカーをするクラブが存在することは、世界の人々がその街のことを思うための大きな縁(よすが)にはなったのではないか。

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