権力の行方

 また、バルトメウはメッシの「権力の肥大化」を恐れている節がある。メッシが発言権を得てきたのは、ピッチ上で結果を出してきたからであり、なおかつ苦しい時に逃げずにバルセロニスタのために口を開いてきたからだ。バルベルデ解任の際はアビダルとの舌戦を辞さず、ERTE(レイオフ/一時解雇)の交渉に際しては選手たちがクラブの要望に対して渋っているという報道に異を唱え、主将としてチームメートを守った。

 対して、「バルサゲート」の問題が明るみに出たのはパラドックスだった。バルトメウが『I3 Ventures』という会社と契約してクラブのOBや現選手たちをサイバー空間で攻撃していたというのである。そして、バルセロナの幹部6人が辞職した。この件については、まだ州警察(モソス・デスカドラ).が調査を続けている。バルトメウへの疑いが完全に晴れたわけではない。

 権力とは、信頼の積み重ねの基に成り立つべきである。クラブ内部・クラブ幹部に信頼されている会長と、チームメートやファンに信頼されている選手が衝突するというのなら話は分かる。が、バルトメウとメッシの場合、すでにその構図でさえない。メッシが退団騒動後もファンとチームメートに受け入れられているのが、すべての答えだ。

 この夏、バルセロナはスアレスが退団する見込みだ。彼にはクーマンが戦力外である旨を伝えている。「MSN」がついに完全に解体される。

 「N」を獲得したのは、ロセイである。「S」を獲得したのは、スビサレッタだ。一方、「N」と「S」を放出したのはバルトメウである。「M」を繋ぎ止めることには、成功した。バルトメウは「MSN」を放出した会長、という不名誉から免れた。だが楽観視できる状況ではない。厳しいシーズンがバルセロナを待っているという不安だけが、募っている。

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