■個性的な戦闘システムだけど初心者にも優しい

攻撃は基本背後から

 シミュレーションRPGであればシナリオと同様に気になるのが戦闘システム。ちなみに先ほどのあらすじも簡単に説明していますが、普通にプレイしていたらおそらく6~7時間ほどかけて把握する内容です。はしょっている部分があるにせよ、大部分はやはり戦闘とその準備となります。その部分が面白くなかったら、いくら読ませるシナリオであったとしてもシミュレーションRPGとしては評価を損ねてしまいますし、シナリオを楽しみたい層にとって「シミュレーション、難しすぎ……」と思われてしまったら最後までプレイしてもらえません。

 そんなバランスをとるのが難しい両者の願望をきちんとかなえているのが『タクティクスオウガ』の戦闘システムです。まずは、本作の戦闘で最も特徴的なシステムとして挙げられる「ウェイトターンシステム」について説明します。

 多くのシミュレーションRPGでは、味方陣営のターンと敵陣営のターンを交互に行っていくという形式がとられていますが、本作では敵味方双方のユニットごとにウェイトという数値があり、この数値が0になったユニットから行動できるようになるというシステムとなっています。

 また、順番が回ってきた際に「移動」「行動」を行うかどうかによっても次の行動順に差が出ます。(たとえば、移動だけして何もしなければ、行動したときよりも次の順番が早く回ってくる、といイメージ)

 このウェイト値はユニットのクラスや能力値・レベルだけでなく、装備によっても変化するため、序盤はあえて防具を外して多くの行動回数を得るという攻略法もあります。このように、プレイヤーは味方陣営のユニットの行動順も把握して、ある程度コントロールしながら敵陣営と戦う必要があります。

 また、フィールドには高低差があり、高所のほうが戦闘時に有利になるようになっています。たとえば弓矢で攻撃する場合、低所からだと届きにくくなっていますが、高所からであれば射程が広がり、命中率も上がるという利点が得られます。近接攻撃をすると手痛い反撃を受ける本作において、遠距離攻撃はかなり有用で、とにかく敵からなるべく離れてせっせと撃つ、ということを基本に立ち回れば何となくコツはつかめるかなと思います。

 ちなみに、正面からだと当たりづらいけど背後に回れば当たりやすかったり、雨が降っていると命中率が下がったりしますのでお気をつけください。

 また、一部では「弓強すぎ」と揶揄されてはいますが、私は正直、これくらい強いほうが攻略しやすくて最後まで楽しめました。『ファイアーエムブレム』でもガンガン前線に出すだけの脳筋プレイで死亡者を続出させるシミュレーションRPG下手の私にとっては、ですが。

 そして、デニムたちと戦ってくれるユニットですが、ストーリーの選択肢によって仲間にできるキャラが違ったり、一定の条件をクリアしないと仲間にできなかったり、ニワトリやおばけを説得して仲間にできたりします。

 そのため、1周クリアするのにとんでもなく時間がかかるゲームではありますが、1周ごとに全然違う顔を見せてくれるため、まったく飽きることなく周回プレイができる作りになっています。マルチエンディングで、全ルートを見ないことには正直クリアとは言えないような周回プレイ前提である本作において、毎回、違う楽しみを用意してくれている構造には頭が下がります。

 他にも、主人公・デニムを含むロウ・ニュートラル・カオスというその人物の本質を表すアラインメントという属性、それによってクラスチェンジできるものが異なったり、地形によって与えるダメージに変化があったりなど、同じプレイをもう一回やれと言われるほうが難しいほど数多くの要素があり、「なんだか難しそう」と思うかもしれませんが、本作はチュートリアルや説明が本当に丁寧です。

 先ほど説明しました「ウォーレン・レポート」もそうですが、「ゲームから離れちゃっていろいろ忘れてしまった!」という場合でも安心して途中から楽しめる上に、初めてのシミュレーションRPGでも安心して遊べるような痒い所に手が届く説明の多さは、とことんユーザーのことが考えられている作品だなと思わせてくれます。

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