■坪井慶介が浦和レッズで見せた本物のディフェンス

 だがそれを解決するのはレフェリングではない。指導者・監督が日ごろのトレーニングのなかで「正しい一対一」を要求し、選手たちが真摯に追求することが、このジレンマを解決する唯一の道だ。試合で起こるすべての事象を生むのはトレーニンググラウンド以外にないことは、どんな時代にも変わらない真実だ。

 ユニバーシアードで活躍した経歴をもってはいたが、福岡大学から浦和レッズでプロになったころの坪井慶介はほとんど無名選手といってよかった。しかし彼は開幕戦でJリーグにデビュー、Jリーグの全30試合にストッパーとしてフル出場して相手のエースをマークしながらイエローカードなしという記録を残した。もちろん、「フェアプレー個人賞」を受賞している。

 翌年には日本代表にも選ばれ、2006年ワールドカップでも活躍。身長179センチ。センターバックとしては「小さい」と言っていいほどだったが、彼の「武器」はパワーや身長ではなかった。素晴らしいスピードとフットワークで相手エースを封じたのだ。プレーの読みとともに、何よりも彼は日々のトレーニングでフットワークを磨きに磨いた。そしてイエローカードをもらわなかっただけでなく、ほんどファウルをせずにJリーグのエースたちを止め続けた。

 坪井は、手ではなく、磨き抜いた足で勝負をした。それが本当の「サッカー選手」というものではないか?

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