■栃木の明本はロドリゲス監督お好みのタイプ

 同一リーグで横滑り的にクラブを変える監督は、自らの戦術を理解する選手を連れていくものだ。徳島では渡井理己の移籍が噂されている。プロ3年目の21歳は、ドリブルとスルーパスが魅力のトップ下タイプだ。

 J2優勝を成し遂げた徳島には、2列目に突破力のあるアタッカーが揃っていた。浦和にも汰木康也関根貴大がいる。渡井が加わればさらに厚みは増す。移籍市場で名前のあがっているFC琉球小泉佳穂も、トップ下を主戦場とする24歳だ。

 浦和は栃木SC明本考浩にも興味を示している、と伝えられている。ロドリゲス監督からすれば、是非ともほしい選手だろう。

 大卒1年目の明本は今シーズンのJ2で、チーム2位タイの40試合に出場し、7得点8アシストをマークした。得点は矢野貴章と並んでチーム最多タイで、アシストは単独トップだ。栃木の総得点は41だから、3分の1以上に絡んでいる計算だ。

 栃木での明本は、2トップの一角を基本ポジションとして、最前線から守備のスイッチを入れていった。執拗なチェイシングで二度追い、三度追いもいとわない。ゲームの終盤でもなお、守備でボールに食い下がる体力と気力を備える。

 栃木では2トップの一角に定着したが、そもそもは2列目の選手である。戦術的な柔軟性も認められるハードワーカーは、ロドリゲス監督の好みにピッタリと言える。

 既存のメンバーでキーマンとなるのは、GK西川周作とFW興梠慎三だろう。

 足元の技術が高い西川がいることで、GKもビルドアップに加わる徳島のスタイルを持ち込める。興梠は1トップでも2トップでもプレーでき、言うまでもなく得点能力が高い。ともに34歳のベテランだが、ロドリゲス監督のもとで再生を誓う浦和には必要な選手だ。

 橋岡大樹もキーマンにあげられるはずだ。右サイドのスペシャリストとして、システムを選ばずに起用されるべき選手である。

 チームが始動してからは、意外な選手起用があるかもしれない。徳島でのロドリゲス監督は、FWの岸本武流をサイドアタッカーとサイドバックに、ボランチの内田航平をCBにコンバートした。「攻守ともにアグレッシブに戦う」自身のサッカーを実現するために、思い切った配置転換をすることも考えられる。

 ロドリゲス監督と徳島は、4年の時間を共有してJ1昇格を果たしている。活躍した選手を引き抜かれることの多かった徳島と異なり、浦和は選手を獲れるクラブだ。スタイル確立までの時間は短縮できるだろうが、1年目はフロントもファン・サポーターも忍耐力が必要だろう。

 ロドリゲス監督自身は、浦和の監督就任に先駆けてJ1クラブに挑む。27日の天皇杯準決勝で、徳島はガンバ大阪と対峙するのだ。今シーズンのJ2で2位に食い込んだチームに、徳島はどこまで対抗できるか。来シーズンの浦和を占う意味でも、興味深い一戦となるだろう。

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