■チョウ新監督のもとで京都はどこまで変われるか?

 個人ではなくチームへ目を移すと、20年シーズンを8位で終えた京都サンガF.C.の動きが早い。

 J1の湘南ベルマーレで実績をあげたチョウ・キジェ新監督の就任をいち早く発表し、かつてチョウ監督に師事したFW武富孝介(浦和)、FW松田天馬(湘南)、MF白井康介(札幌)が加入した。また、武富と同じ浦和からは、GK福島春樹とDF荻原拓也を期限付き移籍で獲得した。荻原は20年シーズン途中からアルビレックス新潟でプレーした21歳で、最終ラインでも中盤でもプレーできるレフティだ。

 さらに、ファジアーノ岡山所属で20年はヴァンフォーレ甲府でプレーした武田将平が完全移籍で加入する。プロ4年目の26歳は左利きのボランチで、20年シーズンは明確なターンオーバーを敷く甲府でチーム3位のプレータイムを記録した。

 気になるのは仙頭啓矢だろうか。19年シーズン後に横浜F・マリノスへ引き抜かれ、9月に期限付き移籍で復帰したこのアタッカーを引き留められるかどうかで、攻撃は大きく変わってくるのだ。

 もっとも、チョウ監督のチーム作りは選手ありきではない。

 湘南を率いた当時は、選手の可能性を最大限に引き出していった。高校や大学で脚光を浴びなかった選手、他クラブで伸び悩んでいる選手を鍛え直し、J1でも通用するレベルへ押し上げていった。遠藤航永木亮太といったハイレベルな「個」が在籍していた時期もあったが、彼らが不在でも成立するスタイル──攻守の切れ目がないアグレッシブなサッカーでJ1に挑み、J2降格を味わいながらもやがてJ1に定着し、18年にルヴァンカップを獲得した。

 20年シーズンの京都を振り返ると、潜在能力を開放しきれていない選手が多かった、との印象がある。「もっとできるのでは」と思わせる選手は、ひとりやふたりではない。伸びしろの大きいチームとも言えるだけに、チョウ監督との出会いでチームが急成長を遂げていってもおかしくない。現状打破に打ってつけの監督を迎えた意味で、京都の移籍市場の収支はプラスと言っていい。

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