■スールシャール監督の采配に負けたクロップ監督

 ただし、狙いはあくまでもラインの裏だった。6分にはリバプール陣内右サイドからのスローインをアーロン・ワン=ビサカが自陣に戻すと、センターバックのハリー・マグワイアが左サイドのハーフウェイライン付近にいたマーカス・ラッシュフォードにパスを通した。ラッシュフォードはそれをダイレクトでゴール前に放り込み、抜け出したエディンソン・カバーニがゴールキーパーのアリソンと1vs1の場面を迎えた。ここではペナルティ・エリア外まで飛び出したアリソンがヘディングでクリアしたが、この試合の狙いはこれですよ、というのを早い時間に見せた。

 ユナイテッドの1点目は、カウンター気味の状態から同じようにラッシュフォードがロングボールで一気に逆サイドの裏へ送り、メイソン・グリーンウッドがゴールしたもので、予告通りの一撃となった。

 2点目は、低い位置でのルーク・ショーのスローインから始まり、中盤でボールを奪い合ってこぼれてきたものをグリーンウッドがラインの裏に送り、抜け出したラッシュフォードがゴールした。この時、リバプールの最終ラインはハーフウェイラインにあり、リース・ウイリアムズの対応がまずかったとはいえ、どういう形を狙っているかがわかりきっている状態ですべき守り方ではなかった。

 ペップ・グアルディオラ監督であれば6分の時点で修正してきただろうし、それが異常な早さだとしても、1点を奪われた時点で数多くの監督は決断するだろう。しかし、リバプールは2点目も失った。攻撃ではユナイテッドがオープンな展開にしてくれたことでモハメド・サラーの2ゴールが生まれたが、結局スールシャール監督の狙い通りに2度もやられてしまった。

 つまり、クロップ監督はまたしても自分たちの通常のやり方に固執し、対策を打てなかったのだ。ここ最近の試合を見れば、打たないのではなく打てないことが明らかだ。

 これで終わりではなかった。

 59分に2-2になると、リバプールは62分にサディオ・マネを投入していつもの3トップを揃えた。すると、対するユナイテッドは66分にブルーノ・フェルナンデスとフレッジを投入し、ポール・ポグバが右に移って2ボランチをマクトミネイとフレッジで組ませた。これは1週間前の布陣と同じ構成で、試合内容も1週間前の堅守速攻に戻した。同点の状態から、まるであの試合の延長戦が始まったかのようだった。

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