さて、当日は観光の途中で団体ツアーの人たちとお別れして地下鉄ピカデリー線のアーセナル駅に向かいました。駅からはサポーターがぞろぞろ歩いてますから間違いようがありません。駅前の通りを真っすぐ歩いていくと左側にスタジアムの西スタンドの正面ファサードが見えてきます。今のエミレーツ・スタジアムではありません。アーセナル・スタジアム、通称「ハイバリー」です。

 ゴール裏の立見席には立錐の余地のないほどの観客がひしめき合っていました。そう、あの時計で有名な南スタンドです。それは、東京12チャンネル(現・テレビ東京)の「ダイヤモンド・サッカー」で毎週見ていた光景でした。当時の日本では考えられないようなグリーンの美しい芝生。その芝生の上をボールが右に左にと速いテンポで行き交います。

 当時の日本国内の試合は、今から思えばなんとも長閑なものでした。FKになれば攻撃側のDFがゆっくり上がって来て両チームがセットしてから「エイヤッ」と蹴って再開となります。一方、当時のフットボール・リーグはいわゆる「イングランド・スタイル」でしたから、ロングボールが猛スピードで行き交うわけです。まるでテニスの試合を見ているように観客が左右に首を振っています。

 そして、一つのプレーが終わると観客同士が大声で「ああだ、こうだ」とプレーを論評している間に、休む間もなく次のプレーに移って逆サイドのゴール前で激しいプレーが繰り広げられます。日本で毎週見ている「サッカー」とよく似てるものの、「フットボール」というのはまったく別のスポーツのようにすら思えました。

 これが、僕の初めての海外旅行であり、初めての海外サッカー観戦となったわけです。

 今は取り壊されてしまったハイバリーに最後に行ったのは、2001年4月のことでした。UEFAチャンピオンズリーグ準々決勝のバレンシア戦でした。この時は、ちゃんと取材申請をしてプレスボックスで観戦しましたが、29年前のことを思い出して感慨にふけったものでした。

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