『犬王』アヴちゃん（女王蜂）×森山未來インタビュー［前編］／お互いの出会いと湯浅政明作品の「魔力」を語る！

女王蜂との衝撃的な出会い

――その湯浅監督の最新作がこの『犬王』です。森山さんが主演の映画『モテキ』に女王蜂がテーマソングで参加されて以来のコラボですね。

森山　僕は映画『モテキ』の後に「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」という舞台が決まっていたんですけど、その構想や打ち合わせは、ドラマ版の『モテキ』を撮っていた頃からプロデューサー陣と始めていたんです。そんな現場で『モテキ』の大根仁監督から、見せられたのが、女王蜂の動画だった。それまで僕らが練っていた「ヘドウィグ〜」のキャラクターが全部崩れ去った気持ちになった。これはもう一度イチから作り直そうという流れになったんです。だから、映画『モテキ』で出会ってはいるんだけど、僕の中ではその映画の撮影に入る前に、女王蜂との衝撃的な出会いがありました。そこからの女王蜂、アヴちゃんはずっと快進撃を続けていますよね。

アヴちゃん　ありがとう！

森山　アヴちゃんは、自分でも前に言ってたけど、ある種破壊的なところから始めて、懸命に模索している人なんです。僕は、その姿を観続けていた10年だったと思います。その後、「ヘドウィグ〜」に出てたのも知ってたから。

アヴちゃん　嬉しい！

森山　いつかまた一緒に何かをできたらいいなとはずっと思ってた。そうしたら今回アヴちゃんが犬王で、僕に友魚役でお話をいただいたので、是非！という思いでした。

アヴちゃん　映画『モテキ』の当時、私はバンドを組んでメジャーデビューしたばかりでした。自分の負の貯金がたくさんあって、周り全員ぶっ潰す！と思ってデビューしたんです。だから、『モテキ』の音楽が決まった頃は、“デビューって何？”くらいに感じていた。でも、実際この世界に入ったらみんな優しくて。一方で、上京して気付いたのは、優しいがゆえに、私たちと同じ目線で闘ってくれる人の少なさだったの。

森山　うんうん。

アヴちゃん　しかも闘う相手が当時の音楽業界の “ええじゃないか精神”だった。今回の映画の犬王と友魚がぶち当たる最初の壁みたいなものを、私も女王蜂として感じていたんです。けれど、私達を『モテキ』のスタッフさんのように、ポップに解釈して仲間にしてくださる方たちもいて。その意味では、私が初めてしっかりおしゃべりした俳優さんが未來氏です。俳優さんや女優さんを輝かせるために、いろんな人たちがチームとなって、その人を作っていくってことも初めて知って、映画の撮影現場って、ある意味大きなバンドなんだなと思ったんです。そして、その中には、ボーカルみたいに一人で立って周りを惹き付ける人がいるんだって思ったのが、未來氏でした。10年前と今ではお互いに変わったとは思うけど、未來氏のすごいと思うところは、内に秘めた熱情がマグマそのもので、そこは全く変わってない。常に渇望しているものが奥底にあるのを近くで見させてもらっています。

後編に続く！

【PROFILE】

【作品紹介】

『犬王』
監督：湯浅政明
原作：「平家物語 犬王の巻」（古川日出男著/河出文庫刊）
脚本：野木亜紀子
キャラクター原案：松本大洋
音楽：大友良英
声の出演：アヴちゃん(女王蜂)　森山未來　柄本 佑　津田健次郎　松重 豊
配給：アニプレックス、アスミック・エース

5月28日より全国公開
INUOH-anime.com

STORY
室町時代。猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王（アヴちゃん）は周囲に疎まれ、その顔はひょうたんの面で隠されていた。犬王は平家の呪いで目が見えなくなった琵琶法師の少年・友魚（森山）と出会う。互いに歌と舞を交わし、一瞬にして二人だけの呼吸、二人だけの世界が生まれていく。お互いの才能を開花させた二人は、歌と踊りで人々を巻き込んでいく…！

写真／橋本龍二　聞き手／遠藤 薫
ヘア&メイク／［アヴちゃん］木村ミカ　［森山］須賀元子　
スタイリング／［森山］杉山まゆみ
［衣裳協力］
［アヴちゃん］本人私物　［森山］ジャケット48,400円（yoshiokubo）、シャツ31,900円（COGNOMEN）、パンツ53,900円（TAAKK）、シューズ私物

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