「太陽のような人」内海賢二の魅力

水樹奈々 ©映画「その声のあなたへ」製作委員会

――一方、ドラマパートはどんなふうに演出されたのでしょうか。

 

榊原監督 先程のお話のとおり、主人公の結花は記者であり、ライターで、インタビュアーでもあるのですが、演じる葵あずささんには、素のままで映画に存在してほしいなと思っていました。葵さんは、当時賢プロダクションの養成所の生徒で、声優の卵だったんです。それもあって、役柄はあるわけですが、声優になりたいという気持ちのまま、彼女には現場に立ってもらいました。

 

――あらためて、お二人からご覧になった、内海賢二さんの魅力とは?

 

内海 僕はやっぱり父として接した部分と、業界に入って共に仕事をして見えてきた「役者・内海賢二」は別々なものとしてあって。僕が言うのも口はばったいですが、仕事現場の父は人を惹きつける魅力があったと思います。また、戸田恵子さんや水樹奈々さんも父のことを「太陽」とおっしゃってくれていましたが、彼がいると現場が明るくなる瞬間を何度となく見てきました。僕は、最初マネージャーとして声優業界に入ったわけですが、この仕事を通して、父の仕事のことをより深く理解できた気がします。

 

榊原監督 賢太郎さんがいま仰ったように、やはり内海さんの人間力ですよね。この映画では、そこにフィーチャーしようと思いました。内海さんがいると現場がまとまり、雰囲気が変わると皆さんが口を揃えてお話ししてくださいました。僕自身、この歳になって、仕事におけるみんなをまとめる役目が並大抵ではないこともようやくわかってきて、それを内海さんがやっていたんだということをこの映画作りを通して、初めて知ることができたんです。

 

かないみか ©映画「その声のあなたへ」製作委員会

 

後編に続く。(10/3記事公開予定)

【PROFILE】
内海賢太郎  うつみ けんたろう

1974年生まれ、東京都出身。株式会社賢プロダクション代表取締役。父は声優の内海賢二、母は同じく声優の野村道子。


 

 

 

【PROFILE】
榊原有佑  さかきばら ゆうすけ

1986年生まれ、愛知県出身。2013年に『平穏な日々、奇蹟の陽』で映画初監督。フィクション・ドキュメンリー問わず創作を続ける。
 

 

「WEB声優MEN」のクリエイターインタビューはこちら

 

<作品紹介>
『その声のあなたへ』
9月30日より全国公開中

監督:榊原有佑
出演:逢田梨香子 伊藤昌弘 内海賢太郎 かないみか 神谷 明 柴田秀勝 杉山里穂 谷山紀章 浪川大輔 野沢雅子 他
配給:ナカチカ、ティ・ジョイ

https://sonokoe.com/
@SonoKoe_0930

 

【INTRODUCTION】
1963年に声優デビューして以降、「北斗の拳」のラオウ役、「ドラゴンボール」での神龍役、「鋼の錬金術師」でのアレックス・ルイ・アームストロング役など長年に渡り活躍してきた内海賢二。1960年代に起きた第一次声優ブームの時代から2010年代まで活躍を続けた内海賢二は、ある世代にとっては兄弟、ある世代にとっては親のような存在として声優業界を牽引し、2013年に亡くなった際には葬儀に約700人の声優仲間らが駆けつけた。
『その声のあなたへ』は、現代のように“声優”という存在が一般化、人気化する以前から内海賢二とともに黎明期の声優業界を駆け抜けてきた仲間、そして彼と交流を深めてきた声優たちを通して知る声優・内海賢二と、今や人気職業として確固たる地位を築いた声優業界の軌跡を知るドキュメンタリーである。

 

©映画「その声のあなたへ」製作委員会

 

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