「役者ってバカだから、期待されると挑みたくなってしまうんですよね」

©今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会
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黒川監督 そうしたら最終話の収録前に朴さんに呼び出されて、「台本見たんだけど」と。

 

 私が質問しに行ったんですよね。

 

黒川監督 そこで「朴さんの中から出てくる一言がほしいんです」と説明させていただいたんです。僕は「『さようなら』かな? 『また会おう』かな? 『ありがとう』もあるな」と考えていたんですが、朴さんは「わかりました。もしかしたら、何も言葉が出ないかもしれません」とおっしゃったんです。そのとき、言葉が出てこないという選択肢を考えていなかった自分、言葉に囚われていた自分の浅はかさが恥ずかしくなったんですよね。監督として、演出として。結果として朴さんは何も言わず、逆にそれが別れをぐっと堪える間になった。「芝居ってこういうことか!」と僕は目から鱗が落ちて、朴璐美恐るべし、なんて素晴らしい役者さんなんだと痛感しました。実はこの話、声優さんから仕事の相談を受けたときなどに、割とよく話すんです。

 

 えええええ!

 

黒川監督 みんな感動して聞いてくれるんですよ。

 

 本当ですか……?

 

黒川監督 僕は監督デビュー作でそういう衝撃を受けて、「朴さんの中にあるお芝居の引き出しは、こちらの想像を超えている」という想いがあるので、そこは未だに変わらないですね。

 

 もう恥ずかしくて帰りたい(笑)。偉そうなこと言ってすみません。

 

黒川監督 いえいえ、あれはすごく貴重な経験でしたし、芝居に対する考え方が大きく変わった出来事だったので、あれがなかったら自分はどうなってたかと思いますよ。

 

©今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会
©今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

 

 それで舞台をよく観にいらしてくださるんですね、ありがとうございます。私の中では、黒川監督は“熱い人”。とにかく熱くて、本当に純粋で率直で。普通だったら「いやいや、そんなのできないよ!」という無茶振りをしてくださるんですが、役者ってバカだから、そうやって期待されると挑みたくなってしまうんですよね。その上、この熱い目でおっしゃるんだから、ずるいですよ(笑)。

 

黒川監督 監督をやっていて本当に思うんですが、自分の想像を超えたものが見えたときって、ものすごい刺激を受けますし、感動するんですよね。それは声のお芝居に限らず映像でもそうなんですが、自分の想像の範疇でものを作っているときは、そんなに面白くない。でもそれを飛び越えてきたとき、「そういう考え方があったか!」と。いつもそういう発見をしたいと思っているんですが、朴さんは必ずその期待に応えてくださるので、毎回「次は何をしてくれるんだろう」と期待してしまいますね。

 

 いや、今回の役も難しかったですよ!

 

黒川監督 本当にありがとうございました(笑)。

 

対談第3回(最終回)は明日公開予定です。お楽しみに!

 

【PROFILE】
朴 璐美  ぱく・ろみ

1月22日生まれ、東京都出身。1993年に円演劇研究所に入所し、女優として活動を開始。1998年に声優デビュー。2017年に新たな活動基盤としてLALを設立した。アニメ代表作に、『鋼の錬金術師』エドワード・エルリック役、『∀ガンダム』ロラン・セアック役、『進撃の巨人』ハンジ・ゾエ役、『NANA』大崎ナナ役、『BLEACH』日番谷冬獅郎役など。また2019年には東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』マダム・テナルディエ役として帝国劇場の舞台に立つなど、女優としても活躍。舞台・アニメ・吹き替え・ナレーション、プロデュースなどその活躍は多岐に渡っている。

 

黒川 智之  くろかわ・ともゆき

アニメーション監督・演出家。主な監督・演出作として、『MURDER PRINCESS』(2007年/監督)、『心霊探偵 八雲』(2010年/監督)、『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(2015年/監督補佐)、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』(2015年/演出)、『龍の歯医者』(2017年/総演出)、など。

 

 

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<作品情報>
映画『ぼくらのよあけ』
2022年10月21日(金)より全国公開中

 

 

【STORY】
1万2000年をかけて地球に来た“未知なる存在” と子どもたちの極秘ミッションが今、始まる―
「頼みがある。私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか?」
西暦2049年、夏。
阿佐ヶ谷団地に住んでいる小学4年生の沢渡悠真は、間もなく地球に大接近するという“SHⅢ・アールヴィル彗星”に夢中になっていた。
そんな時、沢渡家の人工知能搭載型家庭用オートボット・ナナコが未知の存在にハッキングされた。
「二月の黎明号」と名乗る宇宙から来たその存在は、2022年に地球に降下した際、大気圏突入時のトラブルで故障、悠真たちが住む団地の1棟に擬態して休眠していたという。
その夏、子どもたちの極秘ミッションが始まった―

 

【CAST】
杉咲 花(沢渡悠真役)、悠木 碧(ナナコ役)、藤原夏海(岸 真悟役)、岡本信彦(田所銀之介役)、水瀬いのり(河合花香役)、戸松 遥(岸 わこ役)、花澤香菜(沢渡はるか役)、細谷佳正(沢渡 遼役)、津田健次郎(河合義達役)、朴 璐美(二月の黎明号役)、横澤夏子(岸みふゆ)、ほか

【主題歌】
三浦大知「いつしか」

【STAFF】
原作:今井哲也「ぼくらのよあけ」(講談社「月刊アフタヌーン」刊)
監督:黒川智之
脚本:佐藤 大
アニメーションキャラクター原案・コンセプトデザイン:pomodorosa
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:吉田隆彦
虹の根デザイン:みっちぇ
音楽:横山 克
アニメーション制作:ゼロジー
配給:ギャガ/エイベックス・ピクチャーズ
製作:2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

 

【公式HP】http://bokuranoyoake.com/
【公式Twitter】@bokura_no_yoake

 

©今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

 

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