『ドカベン』『とどろけ!一番』『流れ星 銀』…作中で“方向転換”を遂げた人気漫画の光と影
画像は『ドカベン』第1巻(秋田書店)より
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 皆さんは、『月刊コロコロコミック」(小学館)で1980年から連載された『とどろけ!一番』という漫画をご存知でしょうか。受験をテーマにした漫画だったのが、突如ボクシング漫画に方向転換した伝説の漫画です。

 最近では、しがないサラリーマンがチート能力を持つスライムに生まれ変わったり、平凡な高校生がヤムチャに生まれ変わったりと、転生モノは漫画、アニメ、小説の一大トレンドになっていますが、一昔前には『とどろけ!一番』のような、転生ならぬ、作中で華麗なる“転身”を遂げた作品がいくつもありました。

■柔道漫画から国民的野球漫画へ!

 意外と知られていないのが、水島新司先生による国民的野球漫画『ドカベン』(週刊少年チャンピオン/秋田書店)が、当初は柔道漫画だったことです。コミック第1巻の表紙では、山田太郎と岩鬼正美がドドーンと柔道着姿を披露しています。

 山田の中学時代を描いた「柔道編」は実にコミック7巻まで続き、明訓高校に入学して晴れて野球漫画へと変わるのです。『豪華版 ドカベン』では、この「柔道編」が収録されていないことも、“柔道漫画のドカベン”があまり知られていない一因かもしれません。

 ではなぜ、柔道漫画から野球漫画に方向転換したのか? これは別に黒歴史というわけではなく、水島先生いわく、当時『週刊少年サンデー』(小学館)でご自身が野球漫画『男どアホウ甲子園』を連載していたため、それが終わるまで配慮したとのこと。テレビ業界でいうところの“裏番組への出演NG”に意味合いが似ているかもしれませんね。

 もともと柔道部に入る前の山田太郎は野球少年であり(さらにそれ以前は納得の相撲少年)、「柔道編」でもたびたび野球への伏線が張られていたため、野球漫画への転身はあらかじめ想定されていた自然な流れだったのです。

 それにしても「柔道編」時代の山田太郎は、カバンの中はバカでかい弁当箱(ドカ弁)のみ、手のひらに妹のサチ子を乗せて町内を闊歩するなど、のちの彼からは想像もできない“奇行”を見せてくれるのも必読ポイントです。

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