試合後、選手がスタジアムを一周すると、サポーターは温かい手拍子で黄金のユニフォームを迎えた。その選手たちがロッカールームに引き上げる際、手倉森監督はサポーターが見えないところで待機し、選手とスタッフ一人一人をグータッチをして迎えいれた。

 その顔に笑顔はなかったが、だからといって選手を責める雰囲気もない。健闘した選手に対して、強い気持ちを感じさせたものだった。そして、選手やスタッフを集めると、2分ほど川崎戦の敗戦について話をした。その内容は伏せる。このチームを立て直したいという、指揮官の強い気持ちを感じさせるものだったとだけは、書いておきたい。

 サポーターの前や中継に映る場所で行った“パフォーマンス”ではない。ベガルタを這い上がらせるための気持ちから出たものだ。

 復興メモリアルマッチでのまさかの大敗。しかしこの敗戦は、決して悲観すべきものではない。仙台は、クラブもサポーターも街も、もっと厳しいことを乗り越えてきている。それに比べれば、これは飛躍の助走に過ぎない。そして、それを率いる指揮官の気持ちが強い。

 この敗戦がいつか懐かしくなればいい。この敗戦がいつか懐かしくなるだろう。黄金のユニフォームが輝くのは、これからだ。

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